鳥獣食肉処理施設の建設費を増額 古座川町[和歌山県]
和歌山県古座川町月野瀬、南紀月の瀬温泉ぼたん荘裏で、有害鳥獣であるシカやイノシシの肉を食用に加工し、町の特産物として活用するための「鳥獣食肉処理加工施設」の建設が進んでいる。来年3月までに完成し、5~6月に運用を始める予定。9日に開会した町議会9月定例会で、同施設を当初の計画より拡充することに伴う建設工事の補正予算を含んだ2014年度一般会計補正予算案が可決された。 施設は木造平屋(125平方メートル)。専門家の助言を受けて必要な機械をそろえ、衛生面に配慮した設計となっている。肉を傷つけずに電動で皮を剥ぎ、剥いだ皮を有効活用するための機械、肉を熟成させるための冷蔵室(約13平方メートル)、金属探知機、真空包装機、スライサー、急速液体凍結機、冷凍室(約10平方メートル)を導入する。 動物は天井のレールに取り付けたウインチでつるし、屋外で洗浄した後、1次処理室で皮を剥ぐ。つり上げたまま冷蔵室で最低3日間熟成させ2次処理室で加工し、冷凍室に保管する。レールは外から冷蔵室まで整備し、冷蔵室は最大20頭収容できる。 作業員が1次処理室から他の場所に移動するときに細菌を持ち込まないように、廊下を通って服を替えてから他の部屋に入るなど衛生管理を徹底する。 ぼたん荘の料理人らが解体や加工をする。加工した肉は地元の飲食店や宿泊施設で消費し、食育にも活用して町の特産物にする。都会の料理店にも販売し、剥いだ皮で雑貨などの革製品を加工することも考えているという。 町議会9月定例会では、施設の建設費に2265万5千円追加し、5965万5千円とする補正予算案が可決された。国の鳥獣被害防止総合対策事業から1980万円の補助が出る。国の過疎対策事業債も活用する予定。 全国の優良施設を見学し、日本ジビエ振興協議会の小谷浩治事務局長から助言を受けて設計を見直した。当初の計画より建築面積を広くしたため、予算を補正した。天井高を上げ、肉をつるすためのレールを取り付け、廊下を設けた。処理室の床や壁をコーティングし、冷凍庫の周囲に排水設備を設けるなど細部までこだわった。 工事の進捗(しんちょく)状況は約8割で、水害対策の2・7メートルのかさ上げ工事が終了するところだという。 担当の町産業振興課、細井孝哲さん(30)は「専門家に助言を受け、もうすぐ国から発表されるジビエ加工場に関する衛生基準に十分対応できる施設にしている。今後さらに展開していくには衛生面を徹底することが必要で、肉以外にも皮の有効活用ができる施設にしていきたい」と話している。 鳥獣食肉処理加工施設は県内に17施設あり、公営施設は日高川町が建設した施設のみ。 ■まきストーブ導入 ぼたん荘 古座川町は同町月野瀬、南紀月の瀬温泉ぼたん荘にまきストーブを2台導入する。避難所であるぼたん荘に設置することで冬場の災害に備えることと、町内の木材を活用することが目的。費用は745万2千円で全額国からの補助。 ◇ 町は9月定例会で歳入歳出に2億500万円追加し、43億8155万7千円とする一般会計補正予算案など、19件の議案や同意を提案した。日程は26日までの18日間で一般質問は25日の予定。
【建設に向け工事が進む現場(8日、和歌山県古座川町月野瀬で)】