ツキノワグマ、160平方キロ行動…GPS追跡
浅間山麓のツキノワグマのオスの行動範囲は160平方キロを超える場合があることが、NPO法人「ピッキオ」(長野県軽井沢町)などのGPS(全地球測位システム)を用いた調査で分かった。
追跡した3頭の行動範囲は8市町村に及んでいた。調査の結果は、広域的な保護管理や被害防止に役立てる方針だ。
野生のツキノワグマは観察が難しく、その生態は詳しく分かっていない。ピッキオや日本獣医生命科学大などは2010年10月~14年3月の約3年半、三井物産環境基金(東京都)の助成を得て、浅間山麓に生息するツキノワグマの生態を調べる「QUMA(クマ)プロジェクト」を実施した。
オスの行動範囲の調査では、3頭にGPS付きの首輪をつけ、1年間、追跡した。オスは行動範囲が広く、従来使っていた電波発信機では電波の届く範囲が限られていたために見失うことが多かった。
調査の結果、3頭の行動範囲は、43平方キロ~165平方キロに及び、軽井沢町や群馬県安中市など計8市町村にまたがっていた。平均的なメスの2~6倍の広さがあった。
行動した時期を見ると、普段は比較的狭い範囲を行き来する一方、初夏や秋には一時的に3キロ以上離れた場所に移動していた。ピッキオのスタッフ玉谷宏夫さんは、「繁殖期の初夏は交尾するメスを探し、冬眠前の秋は、エサを探していた可能性がある」と分析する。
エサとなる実がなるナラ、栗、桜などの落葉広葉樹林を集中的に行き来していることも分かった。2頭の行動範囲が重なった部分も落葉広葉樹林だった。
別の調査では、ツキノワグマがどのような場所を好むのかを調べた。
軽井沢、御代田両町の国有林内に、ハチミツでおびきよせて体毛を採取する仕掛けを設置したところ、軽井沢町の中心から北に走る国道146号より東側の方が西側より利用頻度が高いことが分かった。落葉広葉樹林が多いことが関係しているとみられ、こうした林が多い群馬県側から来ている可能性も推定された。
玉谷さんは、「森の中のクマの様子が分かってきた。エサの分布調査と組み合わせれば、より正確な出没予測につなげられる。これまで町と森の境界線で水際対策をしてきたが、より広域的な対応をしていきたい」と話している。
2014年05月31日 07時48分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
引用元:http://www.yomiuri.co.jp/science/20140530-OYT1T50047.html