クマ目撃最多92件 1~5月、過去10年
野生のクマと人との遭遇が今年、急増している。県警のまとめでは、1~5月の県内のクマ目撃件数は92件に上り、過去10年間で最多。繁殖がうまくいき、個体数が増えたことで、餌を求めて山から人里に下りてくるクマが増えたためとみられる。6月以降は繁殖期で行動範囲が広がるため、クマに出くわす確率はさらに高まりそうだ。
県警生活環境課によると、今年は4月に13件、5月に79件の計92件の目撃情報があり、昨年までの10年間で最多だった2011年の59件を大幅に上回った。死者こそ出ていないものの、4月2日に仙北市の山林で伐採作業の準備中だった30歳代の男性が襲われ、顔や腕に軽傷を負うなど、負傷者は5月末時点で4人に上り、この10年間で最も多かった10年に並んだ。
県自然保護課によると、クマの餌になるドングリやブナの実はここ数年不作だったが、昨年は並作だったため、良好な栄養状態で母グマが冬眠、子グマの繁殖、成育も順調だったとみられる。県の調査では、今年度の推定生息数は約1200頭で、昨年度の約950頭から大幅に増加している。
前年に餌が豊富だと、翌年は少なくなる傾向がある上、個体数が増えているため、餌を探して山を下りてくるとみられる。また、今年は春に暖かい日が続き、早い時期から山菜やタケノコ採りで山に入る人が多かったことも目撃件数が増えている要因という。
一方で、生息域の変化を目撃件数が増えた要因に挙げる専門家もいる。阿仁熊牧場(北秋田市)を管理する北秋田市商工観光課の獣医師、小松武志さん(46)は「かつては集落周辺の森林は住民が山菜採りなどで使い、定期的に伐採などをしたため、餌が少なかった。クマは人の入らない奥地にしか生息していなかったが、近年は高齢化や人口減少の影響で森林整備の機会が減っており、餌の分布が集落付近にまで広がっている」と話す。
クマの行動範囲が広がる夏場に向け、ますます注意が必要だが、クマは県のレッドデータブックで保護が必要な「留意種」に指定されており、簡単に駆除できない。そのため、農作物などに被害が出た場合は、県猟友会を通じて、被害のあった現場にオリや電気柵を設置して対応する。
県自然保護課は「クマを見たら近づかない。1人で山に入らず、鈴やラジオなど音が出る物を携帯する。食べ残しを捨てない」と注意を呼びかけており、今月からクマが生息する山の近くのスーパーやコンビニ店などに注意喚起のチラシを配ることにしている。
2014年06月07日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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