飼い犬、クマに襲われた主人救う 金沢、吠えて体当たり[石川県]
金沢市御所町2丁目の遊歩道で28日朝に夫婦で散歩していた会社員田中孝季(たかき )さん(63)=御所町1丁目=にけがを負わせたクマの捜索は同日午後、石川県猟友会 のメンバーや警察官ら約20人態勢で続いたが、発見には至らなかった。計3頭いた親子 グマは親が体長約170センチ、子2頭が約80センチで、飼い犬がほえて立ち向かい、 クマを追い払った。クマは山中に逃げ込んだとみられ、29日以降もパトロールを続ける 。
金沢東署などによると、田中さんは、妻富美子さん(59)と一緒に飼い犬のシバイヌ を連れて遊歩道を散歩していたところ、約3メートル離れた木に、目線ほどの高さにいる 子グマ2頭を見つけた。直後、田中さんは近くの茂みにいた親グマに後ろから突然体当た りされ、うつぶせに転倒した。クマは田中さんに覆いかぶさり、頭と尻をかんで逃げた。
富美子さんが約250メートル先の民家に助けを求め、住民の男性(46)が119番 通報した。男性によると、田中さんは自力で住宅街まで歩いたが、頭からの出血がひどく 、全身血まみれだった。
田中さんは入院の必要がなく、金沢市内の搬送先の病院で手当てを受け、自宅に戻った 。
現場は御所ニュータウンの御所ひがし公園から北側へ約250メートルの遊歩道で、周 辺には夕日寺小や金沢星稜大女子短大部がある。遊歩道に続く坂道の登り口周辺には、パ トカーや消防車が駆け付けて規制線が張られ、騒然となった。
付近の住宅街ではパトカーや猟銃を持った猟友会員が巡回し、外出は最小限に控えるよ う呼び掛けた。金沢市は近隣町会の民家に注意喚起のチラシを配った。
近くに住む主婦(46)は「中学生と小学生の子どもがいるので、通学時間に起きてい たらと思うとぞっとする」と話した。
住民によると、遊歩道では25日にもクマの目撃情報があり、町会が回覧板で注意を呼 び掛けていた。
襲い掛かるクマを退散させたのは、田中さん夫婦に連れられていたシバイヌの「ショコ ラ」だった。富美子さんは「いつもは番犬として頼りないと思っていたけれど、見直した 。主人を守ってくれて感謝している」と背中をなでた。
体長50センチほどのショコラは、孝季さんが襲われた直後、背丈が3倍以上もあるク マの背中に飛び乗った。「まさかショコラが向かっていくとは思わなかった」と、富美子 さんは一瞬の出来事を振り返る。クマは驚いて、山中に姿を消したという。
ショコラは10年ほど前に、知人から譲り受けた。おとなしい性格で、知らない人にほ えることはめったにない。富美子さんによると、孝季さんは「この子がいなかったら、ど うなっていたか」と感謝していた。
孝季さんは、朝夕にショコラを連れて散歩に出掛けるのが日課で、家族の中で一番ショ コラをかわいがっていたという。現場は週1、2回、犬の散歩のコースとして通っていた 。