クマの目撃情報、人里で増加 秋以降特に注意を[青森県]
県内各地で、クマの出没と目撃情報が相次いでいる。県警のまとめでは、9日現在までの目撃件数は117件と前年同期(100件)を上回るペースだ。幸いけが人は出ていないが、作業場が荒らされる被害が1件、走行中の車と衝突する事故も2件起こった。専門家は、秋以降、クマが餌を求め人里に下りる可能性がさらに高まると指摘し、県や県警は注意を呼びかけている。(野口晴人)
県警地域課によると、農作物の食害は1件(前年同期4件)で、けが人は出ていない。6月20日早朝には平内町の鉄工所に体長約1メートルのクマが出没、作業場の窓ガラスを割られ、機材が壊される被害が出た。クマを見つけた事務員の工藤輝子さん(65)は「1時間くらい作業場をウロウロしていて、怖かった。誰にもけががなくて良かったが、また来ないか心配」と不安そうだった。
鉄工所は町立東小学校(全校児童84人)の通学路に面しており、同校は当日、付近を登下校する児童に職員が付き添ったほか、集団登校の班長の児童にクマよけの鈴を配るなどした。小笠原千景校長は「地域の方々と協力しながら、子供たちを見守っていきたい」と語る。6月29日には六ヶ所村で、7月8日には青森空港近くの青森市で、道路脇から飛び出してきたクマと車の衝突事故も起きた。
クマの出没はなぜ増えたのか。北海道大学の坪田敏男教授(野生動物医学)は「昨秋は、栄養価が高く好物のブナの実が全国的に豊作で、繁殖が活発化したことが要因の一つでは」と推測する。ブナは豊作の翌年から数年は凶作が続くため、「餌の少なくなる10、11月に人里への出没がぐっと増える可能性が高い。注意すべきはむしろこれから」と警鐘を鳴らす。対策として、クマは視界の開けた場所を警戒して避ける習性があることから、「ヤブ払いをしたり、普段から出没しそうな場所をパトロールしたりするのが効果的」と話す。
県自然保護課によると、夏場はスイカやトウモロコシなど、クマが好む作物が収穫を迎える。秋以降はキノコ採りの入山者が増えるため、クマと遭遇する機会も増える。同課の関口亨主幹は「本来は臆病な動物で、人の気配を察知したらクマから離れていく。入山の際は音の鳴るものを身につけ、もし鉢合わせしたら、刺激しないで静かに立ち去ることが大切」としている。
2014年07月10日 Copyright © The Yomiuri Shimbun