クマ 大量出没の恐れ[新潟県]
今秋、県内でツキノワグマが大量出没する危険性が高まっている。主食であるブナの実の大凶作が予測され、多くの熊が餌を求めて人里に出没する恐れがあるためだ。目撃や痕跡の報告数も、今年度は25日までに336件と過去9年で最も多く、関係者は注意を呼びかけている。(藤本宏、米川丈士)
NPO法人「新潟ワイルドライフリサーチ」の会長を務める長岡技術科学大の山本麻希准教授が、4、5月に関係機関と協力して妙高、十日町市など7か所でブナを調べたところ、開花率は0~12・7%と低く、0%の地点もあった。
調査に協力した十日町市立里山科学館の小林誠研究員によると、同市内の調査地点である山林では、太さ20センチ以上の調査木64本の開花率が4~5%だった。9年前から毎年調査しているが、この数値は0%だった2012年度に次いで低かった。
山本准教授によると、ブナは豊作の翌年は凶作となることが多い。県内の広い地域で豊凶の傾向もほぼ同じになるため、このままでは06、10、12年度と同じく大凶作になるという。
大凶作だった年は、熊の目撃や痕跡の報告数が増える。ブナだけでなく、餌となるミズナラとコナラも凶作だった10年度は10月以降も報告数が減らず、県環境企画課によると、年度を通じて1229件に上り、過去9年で最も多かった。熊に襲われて被害に遭った人の数も11人と最多だった。06年度も同様の状況で、1080件、11人に上った。
これらの年度は、4~8月の報告数だけ見ても、200件弱と多かったが、今年度は既に336件と突出しており、関係者は警戒を強めている。
ただ、ブナ以外の木の実が豊作なら悪条件は緩和される。12年度はミズナラとコナラが豊作だったため、報告数も10月以降は収まったという。
ミズナラとコナラは開花状況だけでは豊凶を判断できないため、枝先につく実の数を調査する必要がある。同課は、これら木の実の豊凶の状況を今月下旬まで調査する予定で、「結果を早急に県民に報告したい」としている。
山本准教授は、「県内には1000頭以上の熊が生息し、生息域が年々広がっている」と指摘した上で、「大凶作の年は、海の近くやこれまで熊がいなかった地域でも安心できない」と警戒を呼びかけている。