新潟のクマ目撃・痕跡、4~8月374件 新潟県など備え急ぐ [新潟県]
新潟県内でツキノワグマの出没が増加している。県によると、2014年4~8月の目撃・痕跡の報告件数は374件で、06年以降では最多だ。農業や人への被害を防ぎ野生動物の管理を進めるため、自民党県議団は財政面などでの支援を図る条例案作りに着手した。県はハンター養成に力を注ぐ。クマの出没は秋に多いため、専門家は注意を呼びかけている。
8月までの目撃件数を見ると村上市、妙高市といった山地の面積が広い地域で特に目立つ。上越市や長岡市といった人口の多い地域でも30件以上の報告があった。県内30市町村のうち、新潟市やその周辺など平野部にある市町村や島しょ部を除き、3分の2の自治体でツキノワグマが目撃されている。
野生動物の生態に詳しい長岡技術科学大学の山本麻希准教授によると、クマの食料となるブナの実が大凶作となっているのが原因だ。「海岸沿いなど、今まで目撃例がなかった地域でも報告があり、クマの生息域が広がっている可能性がある」と指摘する。人が襲われ重傷を負った例もある。
自民党県議団は7月に鳥獣条例検討プロジェクトチームを設置した。群馬県を視察するなどして、鳥獣害対策について県や市町村の役割分担や財政支援を含む条例作りを始めた。「対策を打つタイミングとしては崖っぷち」(座長の桜井甚一議員)との危機感が背景にあり、12月定例会で議員提案を目指す。
県が各地の猟友会の協力を得て13年度から始めた「有害鳥獣捕獲(猟銃)の担い手研修会」の効果も出ている。
猟銃やわななどを含めた狩猟免許試験の13年度の合格数は延べ196人と、12年度(延べ178人)を上回った。今年度は3回の試験のうちまだ1回しか行っていないが、すでに延べ115人が合格した。
ただし、こうした対策は即効性のあるものではない。県内市町村ではクマ目撃情報を電子メールや防災無線などで伝えて注意喚起を図るという、以前からの手法で対応しているのが現状だ。
山本准教授は「裏の畑で遭遇することもある。1人で山に入らず、クマよけスプレーを用意しておくなど個人でできる対策をすることが必要だ」と指摘している。