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熊被害 最悪ペース 東北で多発 10月にかけ警戒を

熊による人的被害が例年に比べて大幅に増えている。餌となるブナなどの実が不足し、人里に下りてくるのが理由。各地で目撃件数が増加傾向にあり、特に東北地方での被害が目立つ。狩猟者が有害捕獲した熊の頭数は増えているにもかかわらず、被害件数が減る気配はない。熊の活動が本格化する10月にかけて警戒が必要だ。  環境省によると、2014年度の人身事故の発生件数は7月末時点で35件。ここ7年間で最も多かった10年度(年間145件)の同時期の件数が36件であり、「発生ペースからみると当時に近づく勢い」(野生生物課)との見方を示す。  特に岩手県は11件と全体の3割を占めた。ブナの結実がほとんど見 込まれないことから、同県は3月から「ツキノワグマの出没に関する注意報」を発令した。  同省の統計は7月末時点だが、目撃情報や被害件数は8月以降も各地で増えている。「目撃が非常に多く、活動が活発になる秋にかけてかなり心配している」(広島県)、「昨年の倍以上の目撃、痕跡情報が寄せられている。8月から出没が目立っている」(富山県)など全国で警戒を強める。  一方、有害捕獲頭数は10年度を上回るペースで推移。7月末の時点で1086頭と、10年度の同時期の1.6倍を上回っている。捕獲頭数が増えながらも、人身事故の発生ペースが変わらない状況を踏まえ、同省は「統計でみる限り、ここ数年でも被害が多い」(同課)と警告する。 ・ブナの実不作 狙われる農作物 農家が危ない  各地で相次ぐ熊の出没で、けがを負う人が続出している。今年は熊の餌となるブナの実が全国的に少なく、人里に下りてくる可能性は高い。ブナの代替として目を付けるのが農作物。冬眠前の熊が活発に活動する秋に入り、農家はますます警戒が必要だ。熊の被害に遭った農家、専門家に課題と対策を聞いた。  岩手県紫波町の米農家、高橋久雄さん(75)は、早朝自宅の敷地内で作業していたところを子連れの熊に襲撃された。玄関前を掃除していた妻の千代子さん(74)がいち早く気付き、久雄さんに声を掛けたことで熊が逃げた。久雄さんは胸を爪で引っかかれただけの軽傷で済んだ。「普段から十分に警戒していたにもかかわらず、事故が起きてしまった」と苦い経験を振り返る。「熊の接近に全く気付かなかった。熊に気付かないまま襲われ、重傷を負ってしまうケースが多いのは分かる」と久雄さん。熊による被害が後を絶たない実態を物語る。  今年度、熊は近年にない高い頻度で出没している。東北森林 管理局がまとめた餌となるブナの結実予測によると岩手、秋田、山形の3県では「皆無」の状態。青森、宮城の両県は一部の木に結実がみられるものの「凶作」を見込む。森林総合研究所の大井徹野生動物研究領域長は「山で餌が不足すると熊は通常の5倍ほど行動範囲を広げる。人里で遭遇する確率はそれだけ高まる」と警鐘を鳴らす。  熊による人身被害は1980年代、年間10人程度だったが、90年代に入ると年間74人まで急増した。大井領域長は「農作物などの食べ物を圃場(ほじょう)に放置し、熊を呼び寄せてしまったのではないか」とみる。被害の拡大を防ぐために(1)生ごみの放置禁止(2)住宅近くの柿や栗の早めの収穫――の徹底などを助言する。久雄さんのように、熊の接近に気付かずにけがを負うケースもあることから「周囲を見渡せるよう、小まめに草刈りをしてほしい」と指摘する。  自治体も対応に乗り出した。熊の目撃、痕跡情報を地図に落とし込み、注意を呼び掛ける。福島県警福島署も9月、「熊っぷ!」を作成。4月から今月24日までの間、53件の熊目撃情報が寄せられ、鶏が襲われる被害も発生した。同署は「熊の多発地帯がひと目で分かる地図を参考に警戒を強めてほしい」(地域課)と促す。  北海道旭川市もヒグマの出没や対策をまとめた地図「クマップ」を発行、支所や公民館などに配布。富山県も「クマップ」をインターネットで公開、24日現在で202件と13年(159件)を上回る情報が寄せられている。同県は「ドングリが不作で熊の出没が多発しており、広報活動を強化している」(自然保護課)と対応に追われる。  熊に遭遇してしまったらどうすればよいのか。ツキノワグマの生態を研究する日本ツキノワグマ研究所の米田一彦理事長は「熊による食害を見つけたら、いつ遭遇してもおかしくない」と指摘。「まず体を大きく見せることが有効。例えばくわやスコップをゆっくりと振り回すのも手だ」と紹介する。

 
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