クマ被害続発 “音のお守り”忘れずに
住民や観光客がクマに襲われる被害が各地で相次いでいる。紅葉シーズンを迎え、山間の行楽地は人出も増える。自治体などは情報を広く伝え、山に入るには鈴などの“音のお守り”を携行したい。
九月下旬、福井、長野、岐阜県などで、襲われた人がけがを負う被害が続いて起きた。中には骨折や入院した人もいる。
今年はツキノワグマの目撃件数が、例年よりかなり多いという。岐阜県白川村は例年の約三倍、長野県大町市でも九月は昨年の十倍を超えた。
秋に目撃が急増するのは、冬眠前のクマの主食であるブナなどのドングリ類が不作で、代わりの食物を求めて人里に下りてくるためだ。今年は東北の被害も際立つ。
環境省によれば、人身被害が百四十七人(うち死亡二人)と、最近ではもっとも多かった二〇一〇年度も、ドングリ類の不作の年だった。
ツキノワグマは本来、おとなしくて臆病な動物である。野生動物の生態に詳しい岐阜大の浅野玄准教授は「人に気づけば怖がって逃げる。不意に出くわすのが、いちばん危険だ」という。
クマに襲われないよう身を守るには「近づかない、近づけさせないこと」が最良の方策だ。
現地に看板などで情報提供もされているが、事前に役場や警察などに目撃情報を確認し、出没地に近づかないようにするべきだ。安易な単独行動も避けてほしい。
だが、森林や山に入らぬわけにもいかぬ。クマを近づけさせないためには鈴や笛、携帯ラジオなどを鳴らし、人の存在や接近を知らせる方法が有効だ。専用の鈴なら登山用品店や現地のホームセンターなどで手に入る。
こんな例もある。福井市の山あいの羽生小学校は毎年、全児童にクマよけの鈴を順繰りに渡している。みんな用心のため、ふだんからランドセルに付けて通学している。
クマが人里に出没し始めたのは最近に限らない。背景には、過疎・高齢化による農山村などの衰退がある。長期的には、それらの適正管理や再生こそが求められる