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ドングリ不作、空腹で冬眠できないクマ 岐阜で警戒続く[岐阜県]

ツキノワグマにとっても人間にとっても、不幸な遭遇が続いた年だった。

トピックス:クマ出没

 特に深刻だったのが岐阜県高山市だ。県によると今年度、県内でクマに襲われて1人が死亡、9人が重軽傷を負い、死傷者の5人を高山市での事故が占めた。県内での死者は統計がある1999年度以降で初めてだ。

 えさとなるドングリがほぼ4年に1度の少ない年に当たり、大発生したマイマイガの幼虫が森の葉を食い荒らして拍車をかけた。県のまとめでは、今年度のクマの出没は17日までに22市町村で1406件。記録がある2002年度以降で飛び抜けて多い。

 高山市では26日までに474件。例年なら20件以下に減る9月以降も、105件(9月)、121件(10月)、141件(11月)と増え続けた。中心市街地でも小学生らが熊鈴を付け、観光客も訪れる城山公園などが一時閉鎖。市はクマが狙う柿の実の採取を呼びかけ、空腹で冬眠できないクマが来年2月まで出没するのでは、と緊張が続いた。

 12月に雪景色になると一転、落ち着きを見せ始めた。26日までの目撃は10件。動きはいったん11日でぴたりと止まった。出没が多かった市街地近くの山林を市が調査しても雪の上に足跡は見つからず、大雪や寒さでクマが動けなくなったか冬眠に入った可能性が大きい、と担当者は胸をなで下ろしていた。

 ところが、25日にまたクマが民家近くの山林の柿の木に現れた。担当者らは雪に残った足跡を山の中へ追跡し、ねぐらにいた雌の成獣を捕獲。「これだけ雪が積もってからクマが出た記憶はない。よほど腹をすかせている」と驚きを隠さない。

 さらに、寝静まった中心市街地でクマが歩き回っていた実態もわかった。11月下旬の未明、山から離れた住宅街で目撃があった。担当者も最初は「まさか。見間違いでは」と思ったが、数百メートル離れた宮川沿いの畑にクマの足跡があった。山側の対岸から来て帰った様子を示していて、背筋が寒くなったという。

 そんな担当者らが「マルコ」と呼ぶ子グマがいる。シバイヌほどの大きさで11月に11回、県立飛驒高山高校や近くの住宅街、コンビニなどに出没した。親からはぐれたらしく、いつも1頭。何とか奥山に戻してやろうと好物の柿の実でわなを仕掛け、監視カメラも設置した。だが、映し出されたのはイタチだけ。マルコは姿を消したままで「雪の奥山で生き延びていればいいのだが……」と心配する。

 12月14日の衆院選は、そんなさなかだった。市選挙管理委員会は32カ所の投票所にクマよけの爆竹を配備。異例の態勢をとったが幸いクマは現れなかった。

 市が捕獲したクマはやせた個体が多く、冬を越せないものも少なくないと担当者はみるが、「人里でえさを見つけることを覚えたクマは、また民家近くに現れる可能性がある」と警戒を続けている。(豊平森)

     ◇

 〈ツキノワグマ〉 本州と四国の主に落葉広葉樹のある山林に分布し、体長110~150センチ、体重80~120キロ。環境省によると、東北、中部地方では6割以上の地域、関東、近畿、中国地方では3割程度の地域、四国では限られた地域に生息する。鋭い爪と歯を持ち、時速40キロで走れる。秋にはドングリを大量に食べ、脂肪をためて冬眠する。県によると、県内では全域の山林にいるとみられ、2011年時点で約2千頭と推定。増加傾向という。

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