アライグマ:奈良の住宅街で目撃例増 今年度180頭捕獲[奈良県]
奈良市の西大寺地区の住宅街で、野生化したアライグマの目撃例が増えている。西大寺地区自治連合協議会(青山文彦会長)は7月末、24自治会役員を集めて「アライグマ出没対策会議」を初めて開き、県景観・自然環境課や市農林課から担当者を招いて最近の傾向や捕獲器の扱い方などを聞いた。【松本博子】
■自治会、初の出没対策会議 捕獲器の扱い方など聞く
西大寺新池町自治会で6月、「タヌキが3頭出た」との情報があり、住民が写真を撮って交番に持ち込んだところ、アライグマと判明。近隣自治会も含めて少なくとも大人3頭、子ども3頭がいるとみられ、回覧やポスターで注意を呼びかけ始めた。
その後、ペットの犬の餌の残りを食べられたとか、高齢者が精魂込めて育てた家庭菜園のスイカやトウモロコシに被害があり、自治会が市から捕獲器を借りた。最初は猫が2頭かかって逃がし、ようやくアライグマ1頭を捕まえた。しかし休日だったため市が回収できず、餌やりの際に逃げられたという。アライグマは広範囲に出没し、一つの自治会の対策では限界があるため、地域で取り組もうと対策会議を開いた。
南都七大寺の一つ、西大寺では貴重な文化財への被害はないが、建物が爪で傷つけられたり、建物の解体時に生息した痕跡が見つかったりしたことがあり、境内に捕獲器を置いて対策している。
■市、今年度は既に180頭捕獲 昨年度は175頭
アライグマは北米からペットとして輸入され、飼いきれなくなったものが野生化。既に全都道府県で生息している。体重が10キロを超えて中型犬ぐらいに成長することも。繁殖力が強く、住宅の屋根裏など高い所にも入り込み、ふん尿による汚染や農作物への被害が出ている。
県によると、生息数は不明だが県北部の農業被害が多く、2002年度に初めてアライグマ1頭を捕獲。09年度から捕獲して獣医師が安楽死させる体制をとり、10年度900頭▽11年度629頭▽12年度833頭を捕獲した。奈良市は数が多いため、13年度から県とは別に、市と猟友会で処分を始めた。13年度は175頭を捕獲。今年度は農業被害が深刻な東部山間地域を中心に、既に180頭を捕獲した。市で42個の捕獲器を2週間ずつ貸し出している。