熊の被害減へ、餌場なくして 出没相次ぐ大町で市民研修会[長野県]
長野県大町市は22日、熊の生態と被害対策を学ぶ市民対象の研修会を市役所で開いた。今年は市内で熊の出没が相次ぎ、熊による人身被害が6件起きているため、熊の被害を減らすために企画した。県環境保全研究所(長野市)の岸元良輔研究員(61)が、約60人を前に、熊を人里に近づけない工夫などを話した。 岸元研究員は「近年になって熊の生息圏が山奥から里山に広がり、人と出合う確率が増えている」と指摘。その原因として「木の間伐や伐採が減って里山が荒廃し、熊が生息できる自然環境になっている」と説明した。 また、今年のようにドングリなど山の餌が不足すると、普段なら山奥でほかの熊を追い出して餌を確保できる大きな熊までも里山まで下りて餌を探すという。熊は縄張りがなく行動範囲が重なる。そのため、畑に放置されたリンゴや残飯といった餌があると、「駆除をしても、また新たな熊が集まってくる。駆除優先の対策より、餌場をなくす対策が優先」とする。 岸元研究員は、熊の餌場となってしまった例として、トウモロコシ畑や養魚場、家畜飼料のある牛舎、ごみステーションを挙げ、「これらの餌は栄養が高く、熊の繁殖力が高まり、熊が増える。熊が人里の餌場に執着すると、人里に慣れてしまう危険性もある」としている。 対策としては、餌場など熊を誘因する原因を取り除くこと、山から人里に続くやぶを刈ること、山の林を伐採、間伐することの3点が重要とした。畑を餌場にしないためには電気柵が有効という。 また、近年、熊の大量出没が起きやすい傾向があり、人身被害も続いていることなどを挙げ、「県の保護管理計画による熊の捕獲自主規制は曲がり角に来ている」との見解を示した。 大町市は現在、「クマ出没警戒警報」を発令中。市内の熊目撃情報は9月は107件、10月(21日現在)は127件となっている。