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トキ繁殖の課題 カラスの捕食対策が必須

 佐渡市の野生下で今季誕生したトキのひなは30日現在、36羽(うち生存確認は32羽)に達し、昨季(14羽)を大きく上回っている。一方、カラスによるひなの捕食が疑われるケースもあり、課題も尽きない。トキを追い続けている新潟大の永田尚志准教授(54)=写真=に、課題と展望を聞いた。(聞き手・石原健治)

 ――「ベビーラッシュ」が続いている。

 「順調といえるが、カラスなどによる捕食の問題は解決できていない。今季も4羽が死んだり行方不明になったりしたが、状況証拠からハシブトガラスの仕業に違いない。同じ林で複数のペアが営巣をやめた例もあった。これもカラスが原因と思われる。親がきちんと巣を守っていれば、ひなは襲われない。両親並みに体が大きくなった巣立ち間近のひなでも、油断しているとやられてしまう」

 ――銃による駆除も検討されている。

 「事実上無理だろう。トキは人家に近いところにおり、銃は使えない。冬季にワナを仕掛けて一網打尽にするしかないが、引っかかるのは若いカラスばかり。野焼きした生ごみにもカラスが集まってくる。また、車にひかれたタヌキや猫を放置しているのも、カラスを呼び込んでいるようなものだ。ごみ対策は重要だ」

 ――テンも天敵だ。

 「荒廃した山林では、テンは簡単に木の上に登って枝を渡る。親も含めてどこでもトキは捕食されてしまう。トキはテンに追われて静かな奥山から人里に下りている状況。テンは1950年代に、サドノウサギによる林業被害を防ぐために導入され、あっと言う間に増えた。今となっては駆除は難しく、山林の間伐など適切な管理に頼るしかない」

 ――野生下のトキは事実上、100羽を超えた。

 「500羽になったら、島外に飛んでいくだろう。放鳥する地区が限られているので、生息域が集中している。思い切って放鳥場所を分散することも必要だ。まだまだ生息可能な場所が佐渡にはある」

 ――きょうだいペアのひなの捕獲ができない事例が起きた。

 「きょうだいペアのひなは捕獲すべきだ。かわいそうだという感情論もあるが、近親交配の子孫には繁殖力の低下などリスクが少なからずあることは科学的にも証明されている。これを放置して増えていけば、100年後のトキの生存を脅かす可能性がある」

 ――放鳥トキをルーツとして野生下で生まれたトキを親に持つ「放鳥トキ3世」がまもなく巣立ちする。

 「放鳥3世といっても、まだ両親ともに野生下で生まれたわけではない。野生下同士の繁殖を誘導した方がいい。放鳥も、今後は野生で生まれたトキの繁殖力を高めるために、数を抑える必要が出てくるだろう。その意味で、何年後に何羽という目標も慎重に考える必要がある」

 ――餌場環境は十分だろうか。

 「佐渡の農家の皆さんの努力で環境が整備され、良い状態にある。あえて言えば、時折田んぼのあぜに除草剤をまいているところがある。あぜにいるミミズや昆虫は重要な餌。できるだけ除草剤は使わず、草刈りでお願いしたい」

【ながた・ひさし】鹿児島県出身。国立環境研究所主任研究員を経て2009年に新潟大に着任。トキの研究は、放鳥が始まった08年から続けている。

2014年05月31日 Copyright © The Yomiuri Shimbun

引用元:http://www.yomiuri.co.jp/local/niigata/news/20140530-OYTNT50222.html

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