鹿の保護施設「鹿苑」:外国人向けのPRで客が昨年の倍増[奈良県]
国の天然記念物に指定されている奈良の鹿の保護に取り組む「奈良の鹿愛護会」が、これまで積極的に公開してこなかった鹿の保護施設「鹿苑(ろくえん)」を外国人向けの観光スポットとしてPRする活動を始めた。手始めに、毎年恒例の子鹿公開(6月1〜30日)に合わせて初の英語パンフレットとポスターを作製したところ、早速効果が表れ、職員は「外国人客が昨年の倍ぐらいに増えた」と驚いている。
春日大社境内にある鹿苑は、交通事故に遭ったり気の荒かったりする鹿約300頭を収容する、いわば「病院兼刑務所」とも言える施設。1929(昭和4)年の完成以降、子鹿の出産や雄鹿の角切りなどの行事を除いては非公開とされてきた。国内外の観光ガイドブックでは地図上に施設名が書いてあるだけで、詳細な説明はほとんどない。春日大社を訪れた旅行客が偶然見つけて立ち寄るだけだった。
しかし、管理する愛護会は「鹿の実態を知ってもらおう」と、2012年12月から一般公開を始めた。現在は修学旅行生らが1日30〜40人訪れるようになった。愛護会はさらに旅行者を呼び込み、なおかつ鹿への理解を深めてもらうためのターゲットとして外国人を選んだ。
今後は出版社などにガイドブックやパンフレットで施設を紹介してもらうよう依頼する。インターネットを活用した発信の強化も考え、英語や中国語、韓国語でも読めるようにしたいという。愛護会の小西凉治事務局長は「どういう施設か分かれば足を運んでもらえるはず。公園だけでなく、鹿苑の鹿も見て、『鹿と人が共生する奈良』の思い出を深めてもらえれば」と話す。
2014年6月18日
転載元:http://mainichi.jp/select/news/20140618k0000e040218000c.html