申請殺到、予算足りず 獣害防護柵の補助制度 田辺市[和歌山県]
イノシシやシカから農作物を守る防護柵の設置を補助する和歌山県田辺市の制度に申請が殺到している。本年度は5月中旬で申請額が予算額(1千万円)を超えた。市町村合併があった2005年度から9年間で、制度により柵の長さは延べ約140キロになったが、被害は続いている。
防護柵は電気柵やトタン板、ワイヤーメッシュ(溶接金網)などがある。イノシシは1・2メートルの高さを飛び越えたり、鼻を使って70キロ程度の物を持ち上げたりできる。シカは1・5メートルを飛び越える能力があるという。柵の設置は動物や地形で条件が異なり、維持管理の負担もある。
市は防護柵の資材費を2分の1(上限30万円)補助している。交付は2009年度97件、10年度104件、11年度112件、12年度159件、13年度141件。12年度から予算を300万円増額の1千万円にしたが、例年秋には予算額を超えるという。本年度は5月末で138件の申請があった。
有害鳥獣捕獲の補助金制度(14年度予算額2497万円)もあり、イノシシやシカなどの捕獲実績も増えている。05~09年度は2千頭台だったが、10年度は3293頭、11年度は3120頭、12年度は4419頭だった。
しかし、農作物の被害額は減少傾向とはならず、3千万円台が続いている。05年度以降、最も多かった07年度は3946万4千円(被害面積17ヘクタール)、13年度は3806万4千円(同31ヘクタール)。
市農業振興課は「作物を育てるだけでなく、守る費用もかかり、農家の負担は大きい。今後、かんきつ類の収穫を控えており、防護柵の需要を調査して補正予算などの対応を検討したい」と話している。