そ〜なんだ!食べてみた:鹿肉、売り込め 獣害対策で捕獲 県が加工販売業者認定[三重県]
◇ジビエ料理、安定供給が課題
県は今年度から獣害対策で捕獲した鹿やイノシシなどの肉「ジビエ」の消費拡大を図る「みえジビエ登録制度」を設けた。県独自の品質・衛生マニュアルに沿って加工販売する16業者を認定し、「県を代表するヘルシー食材」として売り込んでいる。このうち、高タンパク・低脂肪で必須アミノ酸やビタミンB群が豊富な鹿肉に着目し、伊賀地域の解体・加工施設を訪ねたり、ジビエ料理を食べてみた。【鶴見泰寿】
認定されたのは(1)解体施設が「いがまち山里の幸利活用組合かじか」(伊賀市)など3業者(2)加工施設が「サンショク」(同)のみ(3)生肉販売店が「マックスバリュ中部」など7業者(4)料理店が「浪花どんどん」(名張市)など10業者((1)〜(4)は重複を含む)。
このうち、伊賀市山畑の解体施設「かじか」は、捕獲後、これまで山に捨てられていた鹿肉の有効利用を考え、プレハブで乾燥させて作れるドッグフード「しか肉ジャーキー」から取り組んだ。林業を兼務する中森秀治組合長(59)は、苗木などが鹿に荒らされるため、捕獲と解体事業に着手。県のマニュアル通り「血抜きをして60分間以内に解体施設に搬入」することで、「獣臭さはなくなる」と中森さん。現在は鹿の「肩ロース」や「バラ」など各部位の販売もしている。
◇飲食店に登場
県内で唯一認定された鹿肉加工施設「サンショク」(同市問屋町)は「三重県×サンショク コラボレーション」と銘打ち、スライスしたり、味付けして「鹿肉ハンバーグ」や「鹿肉角切りピリ辛味」など5商品を開発。「イオンタウン伊賀上野」(同市四十九町)など系列8店舗と取引している。
サンショクは「カレーハウスCoCo壱番屋」の県内30店と愛知県2店にも食材を提供。これを元に壱番屋は三重県と連携し、鹿肉のメンチカツをトッピングした「みえしか頼めんちゃカレー」を7月19日から10月31日まで販売中。この限定メニューの開発に、サンショクは約4カ月をかけたといい、中野和彦・営業部長(45)は「カレーを5分以内に出せるようミンチ肉の厚さを工夫し、パン粉と牛乳とタマネギの配合に苦労しました」と振り返る。
県の認定は受けていないが、ホテル「サンピア伊賀」(同市西明寺)も「かじか」から仕入れた鹿肉で、今年からランチメニューに2品を追加。鹿野俊介社長(71)の「一般の食卓に並ぶようジビエを普及させたい」との思いから「そぼろ丼」とスパゲティ「ボロネーゼ」(各900円)に決めた。「脂っこくなく、あっさりして食べやすい」と好評で、1カ月で80食出たことも。9月からランチだけでなく、夕食を含めた定番メニューに昇格させる。
サンピアはブロック肉で仕入れているが、かじかの小売価格はロースが100グラム430円、モモは同370円(いずれも税抜き)。
かじかによると、鹿は1頭につき、肉が3分の1しか取れず、通常は30キロ、大型なら50〜60キロ。しかも、野生動物なので、大量注文を受けにくい。
サンショクも「ジビエ人気で需要は増えているが、安定した鹿の大量捕獲が課題」と指摘している。
私(記者)はカレー、そぼろ丼、ボロネーゼを食べたが、いずれも獣臭さは感じず、豚や牛のような脂っこさはなかった。関係者の期待通り、「いずれヨーロッパのように、ジビエ料理が気軽に楽しめるようになってほしい」と思った。