シカ侵入 上高地も 目撃情報 5月以降4件[長野県]
北アルプス上高地(松本市安曇)で今年5月以降、ニホンジカの目撃情報が4件寄せられていることが1日、環境省松本自然環境事務所(同)への取材で分かった。白馬岳周辺など北ア北部ではこれまでも確認されていたが、北ア南部の上高地内では初めてで、北アでも徐々に生息域を広げているとみられる。環境省は、希少植物の食害や生態系への影響に危機感を強めており、年内にも大正池―横尾間でニホンジカの生息状況調査に乗り出す。 上高地周辺では2012年に横尾で鳴き声の情報が、釜(かま)トンネルの松本側入り口付近で目撃情報があった。今年の目撃情報はいずれも上高地内で、5月8日から7月30日までの間に宿泊業者や登山客などから計4件寄せられた。いずれも1頭ずつで、釜トンネル上高地側入り口付近で2件、焼岳登山道、明神―徳沢間でそれぞれ1件ずつだった。 同事務所は、目撃者に電話などで聞き取り調査をして、姿や角などの特徴からニホンジカと判断した。上高地周辺に設置した自動カメラでは、シカは撮影できていないが、同事務所の西尾治・首席自然保護官は「上高地にニホンジカはいるとみられていたが、今回の情報で裏付けられた」とする。年内にも開始する調査の方法は具体的に決まっていないが、上高地内への自動カメラ設置や、個体数調査なども検討するという。 県内の山岳地帯では南アルプスでニホンジカによる食害が深刻で、全国各地でも被害が広がっている。西尾保護官は「南アのように被害が拡大する前に、どのような対策が必要か検討するために効率的な調査を実施したい」としている