深刻な鹿の食害 蓼科のモミの天然林[長野県]
茅野市蓼科の滝ノ湯川沿いに群生するモミが鹿の食害を受け、深刻な状態にあることが山林を所有する湯川財産区の調査で分かった。目通り周囲2~3メートルの巨木だけでなく、種子から育った苗木も枯死しており、このままだとモミの天然林が失われる恐れもある。一帯のモミは小宮御柱祭の御柱用材に使われるため、地元関係者は「当面はなんとかなるが、将来、御柱ができなくなったら大変だ」と心配している。
現場は、ビーナスラインの竜源橋(標高1650メートル)から、下流にある城の平別荘地までの滝ノ湯川沿い。湯川財産区は6月8日、地域住民からの情報提供を受け、山野委員会が被害を確認した。7月20日には財産区議員や山番組の若者ら約30人を動員し、事業費約60万円で200本のモミに鹿除けネットを張り、樹皮剥ぎされた部分に防腐剤を塗布している。 財産区によると、モミへの食害は「チラホラあったが、これだけ大量に食べられたのは初めて」という。大木を中心に被害を受けており、中には根元周囲が約3メートルになる樹齢80年の巨木も。食害直後のためか、周囲の樹皮を全て失いながらも葉をつけているモミが多い。財産区は「大木の伐採はお金が掛かる。立ち枯れを待つしかない」と嘆く。 現地を訪ねると、モミは高さ2メートル以下の樹皮が剥ぎ取られ、地面はおびただしいふんに覆われていた。根元周囲にあった実生の苗木は葉がなく立ち枯れていた。そんな場所が川沿いの3、4カ所に点在しており、案内してくれた財産区の篠原雅秀総代(65)と荻原純一郎議長(65)は「ここは鹿のねぐらかもしれない」と話した。 茅野市鳥獣被害対策室は「2月の大雪で主食であるササが雪に覆われたためモミを食べたのでは。現地に居座っていた可能性もある」と分析する。市は被害状況を考慮して「鳥獣被害対策実施隊」の隊員1人に依頼し、7月下旬からわな猟による捕獲活動を一帯で始めた。八ケ岳山麓の他地区からは、深刻なモミ被害の報告は入っていないという