イヌワシの狩り場守れ 人工林伐採し自然林回復へ [群馬県]
絶滅が危ぶまれるニホンイヌワシの生息環境を守ろうと、群馬、新潟県境に広がる国有林「赤谷の森」(約1万ヘクタール)の人工林の一部165ヘクタールを伐採し、イヌワシの狩り場となる自然林に戻すプロジェクトが官民合同で始まる。9月から森の植生や飛行ルートを調べ、第1段階として来年秋に一部を試験伐採する。
プロジェクトを進めるのは、日本自然保護協会(東京)と林野庁など。
イヌワシは北海道から九州まで広く分布する大型猛禽(もうきん)類。日本イヌワシ研究会によると、国内生息数は500羽程度で、この30年間で150羽以上減った。環境省が絶滅危惧種に指定している。
減少の原因の一つとして指摘されているのが、林業の衰退で放置された人工林が増え、イヌワシの狩りを難しくしている点だ。
イヌワシは、ノウサギやヘビなどを飛びながら見つけ、捕らえて餌にする。このため、イヌワシが生息するには餌となる動物が育ち、上空に開けた環境が欠かせない。
間伐などの管理がされなくなった人工林は、樹木が密生して日光が地上まで届きにくく、ノウサギなどには厳しい環境だ。また樹木の間隔が狭くなると、イヌワシが獲物を見つけられない。
このため、赤谷の森では、生息するイヌワシのつがい1組が狩りに困らないようにするため、群馬県みなかみ町にある営巣地の半径2キロ以内のうち、来年9月にまず2ヘクタールの樹木をすべて伐採。つがいが狩りに利用するようであれば、3~5年ごとに伐採範囲を広げ、将来的には、子育て期に餌の確保に困らないよう、人工林165ヘクタールを伐採することも目指す。
日本自然保護協会の担当者は「近年の餌不足で、イヌワシの繁殖成功率は大きく下がっている。近場で十分な餌を調達できるよう環境を整え、絶滅の危機から救いたい」と話している。〔共同〕