野生動物による被害で注目 「週末猟師」で人の役に立つ!
2014年5月2日
不況とはいえ、数十年前に比べれば格段に豊かになった日本。銃を片手に野山を歩き回り“猟”をたしなむ人が増えていそうだが、現実は大幅に減っているという。
「毎年、我が町では800頭前後に及ぶヒグマの出没が現認されています」
こう語るのは、北海道東部、オホーツク海に面した「斜里町」(人口1万2000人)に住み、知床の自然環境を研究している木村憲さん(64)だ。
ヒグマの生息地、北海道には生息数が2200~6500頭。体長は2~3メートルで、体重が200~500キロもある。人が襲われたらひとたまりもない。
道庁の統計によると1955年から現在まで、ヒグマに襲われて亡くなった人は50人。トウモロコシなど農業被害金額は約2億円(2010年)。
そのうち前述した「斜里町」を含む道東・宗谷区域には、推定で1150~3390頭のヒグマが生息しており、時として痛ましい事件も起こる
「3年前の秋、小学校近くに3頭のヒグマが出てきて、地元の『大日本猟友会』の会員が2頭を射殺した。この射殺では動物愛護の観点から批判の声が寄せられました。助ける方法がなかったかと。でも子どもたちの命を考えたとき、射殺はやむを得なかった判断です」(前出の木村さん)
とくに冬眠前の秋、または冬眠から覚めた春先にヒグマは食物を求めて徘徊(はいかい)。徘徊の地域は巣穴がある山奥から、食べ物があふれた住宅地にも及ぶことがある。
そこで、住民の期待とともに登場するのが「大日本猟友会」の会員たちだ。
1929(昭和4)年の創設という「大日本猟友会」(本部=東京・千代田区)は、都道府県に支部を持つ。一時期、会員総数は40万人を超えていたが、現在は13万5000人に減少した。
会員は、都道府県が発行する「狩猟者登録」が必須で、そのためには筆記試験をはじめ、視力、聴力、運動能力等にパスしなければならない。
それに3年に1度の更新で、更新では適性検査や講習会の参加が必修。年に最低1度の銃検査(地元の警察署)も登録者の条件にされている。
会員は鳥類29種、獣類20種の狩りが認められているが、それも期間(北海道を除き、11月15日~翌年2月15日)限定だ。
■銃は30万~40万円、猟犬の費用もかかるが
ところが、とりわけ近年、猟銃による事故が社会問題視されたために、銃所持の規制が強化され、登録者のハードルも高くなった。
また、会員の高齢化が進んでおり、そのために、会員数は下落が止まらない。結果、浮上してきたのが前述のヒグマ狩りや、年々、全国の住宅地に出没数が急増しているイノシシ狩りの対策である。東京・東久留米市に住む曽我宇一さん(73)は、30歳のとき友人に誘われて「大日本猟友会」の会員になった。
3丁の銃(1丁30万~40万円)を持ち、猟が解禁になると、2頭のポインター犬を連れ、仲間と一緒に長野県などの山奥に入った。曽我さんがこう言う。
「1日2箱(1発100~500円)、50発ぐらい撃っていました。だが、年を重ねると急な上り坂など山歩きがつらくなる。銃の所持は警察がうるさいし、また常に射撃の練習をしてないと、銃が重くなって持てなくなる。ポインターはまだ飼っていますけど、年を考慮して猟友会を退会し、銃は警察に返しました」
猟友会の高齢化で鉄砲撃ちが減少。獲物は増え続けている。週末猟師になるなら今だ。
引用元:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/149895/1