知床岬のエゾシカ密度、再び増加[北海道]

エゾシカ対策の重点地域である知床岬の先端部で、エゾシカの越冬数が再び増加した。今年は流氷が長く居座ったために捕獲作業の開始が遅れ、捕獲数が大きく減少。目標としていた生息密度を維持することはできなかった。
環境省が12日、知床世界自然遺産地域科学委員会のエゾシカ・陸上生態系ワーキンググループ会議で報告した。
知床岬の先端部(約7平方キロ)では一時期、500頭以上のエゾシカが越冬し、環境省が2007年度(シカ年度=6月~翌年5月)から個体数調整の捕獲を続けている。12年度は事前の航空調査で56頭を確認し、ヘリコプターと船で2回現地入りして計32頭を間引いた。生き残りは24頭、1平方キロあたりの生息密度は3・4頭になり、初めて目標だった5頭以下まで引き下げた。
捕獲の適期は厳寒期だが、流氷の期間はヘリで向かうしかない。だが13年度は「低密度維持は低コス
トで」との考えから、経費がかかるヘリ利用をやめて船のみにした。
ところが今年は流氷が長く居座り、1回目の捕獲が4月30日と大幅に遅れた。3月3日の航空調査で59頭を確認していたが、船で入ったとき、先端部ではすでに雪解けが進んで多くが林地内に分散し、確認できたのは15~20頭。捕獲は9頭にとどまった。2回目の5月12日は捕獲できなかった。過去に捕獲を経験したためか、警戒心が強く、捕獲が難しくなったという。
航空調査時の59頭から捕獲した9頭を引くと生き残りは50頭で、生息密度は1平方キロあたり約7頭と、前年度の2倍に増えた。
環境省釧路自然環境事務所は「それでも低密度は維持できており、先端部の植生も回復傾向にある。だが周辺部から相当数の流入があるため、予断は許されない。来シーズンは捕獲効率とコストを勘案しつつさらに効果的な捕獲方法を考えたい」としている。
今年度は知床岬とウトロ地区の中間にあるルシャ地区で捕獲したエゾシカ10頭に発信器を取り付け、季節移動を把握する考えだ