高知県三原村森林組合がばねを使わないわなを開発 安全で簡単[高知県]
ばねを一切使わず、シカやイノシシなどをワイヤで捕らえる新型のくくりわなを、高知県幡多郡三原村の森林組合が開発した。従来製よりも簡単かつ安全に設置できる。このわなの開発で三原村森林組合は今年初め、四国森林局長賞の最優秀賞に選ばれた。今春から試験的に販売を始めており、「今までと全然違う」と評判を呼んでいる。
「ほら、おった」 三原村広野の山中。組合職員が指さす斜面にシカが1頭いた。逃げようとするが、新型わなに掛かっており、右後ろ足首がワイヤでくくられている。
すぐ隣には、金属製の柵で囲われた田んぼが広がる。頻繁に現れていたシカがいたといい、田んぼの持ち主の寺岡三夫さん(72)は「(従来のわなを)掛けても掛けても捕れざったやつ。このわなは大したもん」と言う。
新型わなは、丸くくりぬいたプラスチック板を重ね、板の間にワイヤを通したシンプルなもので、地面に穴を掘ってはめる。獣が踏み抜くと、透明のプラスチック板でできた弁が脚に絡み、足首にワイヤが掛かる。 開発したのは、三原村森林組合の小笠原洋さん(59)=三原村上長谷。長年、大工をしながら友人のためにわなも作ってきた。新型わなは、腐った床を踏み抜いてなかなか抜けなかった経験から思い付いた。
三原村森林組合の矢野憲三組合長によると、増え続けるシカがヒノキなどの若い樹皮を食い散らし、食害は農業のほか林業にも及ぶ。矢野組合長は「害獣は捕るしかない」と言う。
だが、ばねが跳ね上がる力でワイヤを引っ張る従来のわなは、ばねの力が強くて設置が大変な上、誤ってばねが顔に当たり、大けがをするなどの事故もあったという。新型わなはその心配がなく、狩猟関係者から「画期的」との声も上がる。
三原村森林組合は特許を申請するとともに今年4月から試験的に販売。高速道のシカ被害に悩む兵庫県などからも問い合わせがあり、全国販売を目指している。直径18センチと12センチの2種類あり、問い合わせは三原村森林組合(0880・46・2436)へ。

※写真:組合事務所の隣にある作業場で、わなを作る小笠原洋さん=左、左から順に、木の棒をシカの脚に見立てた新型わなのデモンストレーション。わなを踏み抜くと、透明の弁が絡み、逃げようとすると、足首にワイヤが引っ掛かる=右(高知県幡多郡三原村来栖野)