女性にエゾシカ肉を 「鉄分の日」設け ランチ提供 北海道中標津町のカフェ「ループ」 [北海道]
鉄分摂取にエゾシカ肉を――。北海道中標津町のカフェ「ループ」は、エゾシカ肉に含まれる豊富な鉄分に着目したランチを提供し、多くの女性客でにぎわいを見せている。店長で栄養士の佐藤あゆ美さん(53)は、エゾシカ肉独特の癖を除きながら味と栄養を考えて調理。出産で鉄分を多く必要とする妊婦を中心に人気が高まっている。 ・多い日は妊婦さん3割 釧路市阿寒町出身の佐藤さんは、仕事で体調を崩したことを機に、栄養士を目指して49歳で釧路短期大学に入学。エゾシカ肉の栄養分の豊富さや多彩な調理法を知り、鉄分が欠かせない女性が食べやすいエゾシカ肉料理を出す飲食店を経営しようと考えた。 釧路市や中標津町の周辺は野生のエゾシカが多く、食習慣の歴史も古い。ただ、調理法も確立していなかった当時のエゾシカ肉は「肉が臭くて堅いという印象があり、積極的に食べたいものではなかった」と佐藤さん。 同大では、たんぱく質と鉄分が豊富で低カロリーというヘルシーな部分に着目した授業もあり、学生がエゾシカ料理のレシピを考案するなど取り組みが盛ん。佐藤さんもこうした授業に参加しながら2012年に栄養士資格を取得し卒業、まもなく念願の店を開業した。 注目したのは鉄分だ。成人女性1日当たり十数ミリグラムの摂取が必要で、男性より多い。妊婦となれば同二十数ミリグラムが必要だが、実際の摂取量は平均で10ミリグラムに満たないのが実態だ。 そこでカフェ「ループ」では、毎月決まった曜日を「鉄分の日」とし、エゾシカ料理を提供することにした(冬季を除く)。8月は毎週水曜日に軟らかく煮た肉とホウレンソウを使った「ポパイカレー」を提供、黒板には鉄分は8ミリグラム程度摂取できることを紹介した。他にも「カルシウムの日」と「ビタミンの日」も設け、それぞれ1日の必要量の半分 以上を満たすメニューを提供する。 客のほとんどは女性で、3割が妊婦という日もあった。佐藤さんは「女性にもっともっとエゾシカ肉の魅力が浸透するよう、店の経営を良くしたり、調理教室を開いたりしたい」と夢を描く。 ・牛豚肉に比べ豊富さが魅力 鹿肉の栄養価に詳しい長野県の松本大学人間健康学部の矢内和博専門講師の話 牛や豚肉などと比べて鉄分を多く含み、高たんぱく低脂質。鉄分不足の人やカロリーが気になるけれど肉を食べたい人にとって有望な食材。ビタミンBも豊富で摂取すれば疲労回復につながる。まずは店で上手に調理しておいしさを伝えることで、認知度アップが期待できる。(岡信吾)