シカよけ網に野生クマタカ絡む 高森町で保護[熊本県]
高森町色見の山林に張られたシカよけネットに、絶滅の恐れがある野鳥「クマタカ」が絡まり保護された。獲物を捕獲する際にネットに突っ込んだとみられ、シカの増加が希少な野鳥の生息環境に影響をもたらした。 クマタカはケガをしているとみられ、町職員が2日、御船町の県鳥獣保護センターに運んだ。 クマタカは「森の王者」と呼ばれ、野鳥ファンに人気だが、間近に見る機会はほとんどない。体長は80センチ前後で、翼を広げた大きさは160センチほど。環境省のレッドデータブックで、近い将来に絶滅の危険性が高い「絶滅危惧ⅠB類」に分類されている。 同町の林業家、馬原益夫さん(69)が8月30日、スギ林に張り巡らされた高さ2メートルほどのシカよけネットに絡んで動かない猛禽類を発見。ネットを切って保護し、町役場を通じて同センターなどに連絡した。 馬原さんが肉や水などのえさを与えると、立ち上がるまでに回復したという。クマタカと知った馬原さんは「50年以上林業をやっているが初めて見た。何とか死なないでほしいとの思いだった」。 保護されたクマタカは、左の翼の付け根部分を負傷しているとみられるが、程度は不明。同センターは「飛べるようになるかもしれないが、獲物を捕獲できるほど回復するかは分からない」と説明している。 日本野鳥の会県支部の山本和紀副支部長(66)は「シカ対策などのネット増加によって、猛禽類などの事故が今後も増えていく可能性はある」と話している。(藤山裕作)