クマの生息域拡大懸念…県、保護管理計画見直し[石川県]
県内でツキノワグマの出没が相次いでいる。今年の目撃情報は141件と前年を上回るペースで、9日には金沢市中心部の金沢城公園でクマとみられる動物が目撃された。昨年初めて能登半島北部でクマが目撃されるなど、近年は七尾市や中能登町など能登地区での目撃が目立っており、生息域の広がりも懸念される。県はクマの保護管理計画を見直すなど、対策を強化している。
県自然環境課によると、県内の9月1日時点でのクマの目撃情報は、141件(前年同期比18件増)に達し、大量出没した2010年以来の勢いで推移。このうち金沢市は77件で、昨年1年間の46件を既に上回っている。
昨年は、それまでクマの生息域の北限と考えられていた羽咋市と七尾市にまたがる邑知潟おうちがた平野よりも北の七尾市の山間部で初めてクマが目撃されたが、今年は同市で5月に目撃情報があったほか、8月に民家敷地で足跡が見つかった。
同課は「金沢は、里山を切り開いてできた住宅街と鳥獣が多く生息している奥山が接近している。能登は、里山が荒廃し、鳥獣のすみかとなっている。これらが、クマの出没が増えている要因」と分析している。
県は今月、クマの保護管理のあり方を策定した「県ツキノワグマ保護管理計画」を一部変更した。これまで計画の対象範囲としていなかった志賀町、穴水町、輪島市、能登町、珠洲市を含めた県全域を計画区域とし、奥能登地域で今後、クマを全頭捕獲し生息域の拡大を防ぐ方針を盛り込んだ。
同課によると、県内には700~900頭のクマが生息。主に、ブナ、コナラ、ミズナラの実を餌とし、9月頃から、冬眠に備えて餌を求めて回り、里山や市街地に出没しやすくなる。
今秋は、ブナが大凶作とみられるが、コナラやミズナラは十分に実るとみられ、同課はクマの大量出没の可能性は高くないとみているが、「目撃したらすぐに通報し、絶対に近寄らないでほしい」と話している。