シカ・イノシシ食害:消えた佛隆寺のヒガンバナ 宇陀市が防護柵設置へ [奈良県]
宇陀市榛原赤埴にある古刹、佛隆寺のヒガンバナが鹿の食害などで壊滅状態と分かり、市は獣害防止の防護柵を近く設置する。観光資源保全事業として100万円を計上し、9月市議会に提案している。
佛隆寺は真言宗室生寺派の寺院。平安時代前期に空海の高弟、堅恵(けんね)が創建したとされる。樹齢900年以上の「千年桜」(県の天然記念物)とともに、境内へ続く石段の参道に沿って咲くヒガンバナが有名。市商工観光課によると、ヒガンバナは約2000平方メートルにわたり群生し、数万本という。しかし、一昨年ごろから花が見られなくなった。市の調査で、鹿が新芽を食べたうえ、イノシシが掘り起こすなどの獣害で咲かなくなったことが分かった。
金網の柵は植生地周辺に設置し、来年度以降は球根を植栽する計画。市は「今シーズンの開花は望めず危機的状況だ。完全復活には数年かかるのでは。大切な観光スポットだけに、ヒガンバナの景観を取り戻し観光資源の保全につなげたい」としている。【神門稔