列車・野生動物衝突:JR山陰線で相次ぐ、年間70〜80件発生 抜本的対策難しく[山口県]
県内のJR山陰線で、シカやイノシシなど野生動物と列車との衝突が相次いでいる。ここ数年の発生件数は年間70〜80件に上っているという。列車側は衝突を避けようと一部区間で徐行運転を取り入れているが、それでもとっさの対応には限界があり、抜本的な対策は難しい状態だ。【平川昌範】
JR西日本広島支社によると、県内の山陰線では2010年度に78件▽11年度は88件▽12年度が77件▽13年度も75件−−の衝突があった。このうち9月4日のケースでは、午前11時50分ごろ、下関市豊北町粟野の長門粟野−阿川駅間で、上り普通列車(1両)が線路内にいたシカと衝突した。シカは死んで線路を塞ぎ、上下2本が最大55分遅れた。乗客15人に影響した。
少なくとも近年はけが人の報告はないという。しかしJRは対策のため、野生動物が特に多く現れる長門粟野−阿川駅と長門二見−宇賀本郷駅(いずれも下関市)の2区間で夜間の徐行運転を始めた。ただ、野生動物は線路左右の山林から突然現れ、運転士がとっさに対応するのは難しいという。JR広島支社の担当者は「線路に柵もないため動物は容易に入れる。これ以上、対策の取りようがない」と頭を抱える。
下関市豊北町でシカやイノシシの駆除に取り組む県猟友会豊浦西支部の市倉正義さん(71)は「シカやイノシシは獣道を通るため、線路を歩くことは少ないと思う。ただ、線路を横切る際にちょうど通りかかった列車の音や光に立ちすくみ、はねられてしまうのだろう」とみる。さらに「10年ほど前から特にシカが多く現れるようになった。理由は分からないが私たちも困っている」と話す。
〔下関版〕