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駆除のシカ肉特産品に [神奈川県]

伊勢原市は、シカ肉を使ったジビエ(野生鳥獣)食品の開発に本格的に乗り出す。有害鳥獣による作物被害を食い止め、地元特産品として売り出す一石二鳥の効果が狙い。民間の山小屋を解体処理施設用に改修してもらい、4月にもシカ肉加工品を市販する予定だ。

 丹沢・大山一帯に生息するシカは、約5500頭。同市のシカによる作物被害は報告分だけで年間約350万円に上る。一方、市が駆除するのは年平均80頭。このほかにハンターが約60頭を射止めるという。

 シカ肉食品は以前からあったが、自己消費が原則。法的な規制はなかった。

 しかし、昨今のジビエブームで、第三者に提供したり、販売目的で製造したりするケースが増加。各都道府県は食品衛生法に準拠した条例で対応に当たってきたが、昨年11月に国が統一ガイドラインを示した。

 市農業振興課の高橋健一副主幹は「ガイドラインはシカの肌など外観に異常はないか、食用の部位に弾が残っていないかなど常識的なもの。最大のポイントは猟場近くに解体処理施設が必要なこと」と説明する。

 シカの場合、2時間以内に放血(血抜き)して、内臓を取り出さないと肉質が低下し、傷みも早い。これまでは山奥の現場で解体し、内臓を土中に埋めるケースがほとんどだった。

 これに対し、人家近くに出没するシカを射止めた場合は、短時間で搬送できる。市の北側、大山や高部屋、比々多地区には13の林道が走る。仁ヶ久保にがくぼ林道脇に山小屋を所有する金属加工業、磯崎敬三さん(71)が、市の依頼で小屋に解体室を新設。さらに冷蔵室も増設する。すべての林道から40分以内で到着できるという。

 磯崎さんは地元狩猟会の幹部で、昨年まで16年間、市山岳救援隊長を務めた。「有害鳥獣とはいえ、その命を有効に使うため一役買いたい」と話す。

 シカ肉を売り出す構想は2年前に持ち上がった。市が音頭を取る「地域特産物研究会」で取り上げられ、試作品を製造。コンビーフはぱさぱさだったが、ジャーキーとソーセージ、カレー用肉は好評だった。イノシシも捕獲されるが、頭数が少なく解体も難しいため、敬遠されている。

 60キロのシカで食用になるのは最大20キロ程度という。製造を手がけた柏木牧場の柏木貞俊専務(51)は「脂分が少なく濃厚な風味は、特に女性に人気。使える肉は後ろ脚のももだけで利益は少ないが、伊勢原の知名度を上げたい」と語る。

       ◇

 伊勢原市は昨年4月、猟友会の会員25人を鳥獣被害対策実施隊に編入した。隊員になると、猟期(11月15日~2月末)や猟場以外でも狩猟ができ、講習免除や登録料半減などの恩典がある。市によると、こうした措置は県内初めてという。

 駆除が進めば、ジビエ食材も確保でき、相乗効果が生まれる仕組みだ。隊長の志村功・市経済環境部長は「フルーツに加え、ジビエ食品も市の特産品として売り出したい」と張り切っている。

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