山の幸 ジビエ 幸あれ イノシシ食害 食べて解決[富山県]
県がレシピ紹介、料理講習会
イノシシ肉をふんだんに使ったしし鍋
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農作物に被害を及ぼすイノシシ。県はその肉を活用した「ジビエ料理」の普及に力を入れている。一方で、猟師の減少や高齢化の影響で、捕獲したイノシシの獣肉処理が思うように進まない現状もある。さまざまな課題解決の鍵を握るのは、山の幸・ジビエの普及だ。(広田和也)
■捕獲数最高
県農村振興課によると、二〇一四年のイノシシによる農作物への被害額は四千百九万円、年々増加傾向にある。県は電気柵の整備や猟師への支援など対策を進め、一四年度のイノシシの捕獲頭数(一月末現在)は、前年度末の二倍超となる過去最高の千九十頭となった。
イノシシ肉を無駄にしないため、県は欧州で高級食材とされるジビエに注目。「とやまジビエ」として、レシピの紹介や料理の講習会などを企画。二月には、県内の飲食店十六店舗でジビエ料理を楽しめるフェアを初めて開催した。県の担当者は「ジビエのおいしさをもっと知ってもらいたい」と意欲をみせる。
富山市内の山奥で撮影されたイノシシの成獣=いずれも県提供
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■猟師高齢化
イノシシを捕獲する猟師の高齢化は年々加速。県猟友会の年齢構成を見ると、〇六年度に六十歳以上が全体の50%だった会員は、一三年度には68%に高まった。
会員数もピークだった一九七八年度の二千百七十五人に比べ、一四年度は七百三十四人と約三分の一に減少。県猟友会の担当者は「猟は『農業者のために』という思いから始まったボランティア。猟銃の管理など経済的な負担も大きく、それなりの対価がないと続けられない」と話す。
捕獲したイノシシを獣肉処理施設に運ぶ作業にも手間がかかるという。県のガイドラインでは、雑菌対策のために捕獲後すぐに施設に運ぶ必要がある。だが、重さは八〇キロほどあり、大きいものでは一〇〇キロを超す。重機を使って運び出す場合もあり、県内の獣肉処理施設二カ所では、三年間で約百件と利用実績が伸び悩む。
猟友会の担当者は「捕獲しても出費がかさむ。猟師の減少は、ジビエ普及にも影響があるので、行政には経済的な支援を強化してほしい」と訴える。
■免許講習
県はこれまで、狩猟免許試験の実施回数を増やし、受験者向けの講習会を開催。こうした地道な努力が実り、一四年度の狩猟者数は三十六年ぶりに微増に転じた。新年度からは、ベテラン猟師が経験の浅い猟師に実地研修する事業を行う予定で、県の担当者は「猟師の数やジビエの需要が増えれば、捕獲頭数も増えて農業被害も抑制できる。それぞれが恩恵を共有できる関係強化に努めたい」と話している。
後記
おいしいジビエ料理を堪能するためには、猟師の腕前が重要という。「内臓を撃ってしまうと、お肉が獣臭くなってしまうんだ」と県猟友会の担当者。頭を撃つことで、獣臭さはある程度防げるらしい。
学生時代に初めて食べたしし鍋は、あまりの獣臭さに吐き気すら覚えたのを思い出す。猟師の減少も由々しき課題だが、腕前の向上にも目を向けた支援を県には期待したい。