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中部山岳国立公園内のシカ、「定着確認」捕獲実施へ [長野県]

長野、新潟、富山、岐阜の4県にまたがる北アルプスを中心とした中部山岳国立公園内で、環境省などは平成27年度から、ニホンジカの捕獲に初めて乗り出す。これまで公園外の北アルプス山麓部で定着が確認されていたニホンジカだったが、公園内の亜高山帯(標高約1500~2500メートル)でも目撃例が増え、生息密度は低いものの定着しつつあることが確認されたためだ。「お花畑」と呼ばれる貴重な高山植物の植生が壊滅的な状況となった南アルプスを教訓に、北アルプスのニホンジカ対策は捕獲実施という新しい段階を迎えた。

 ◆デッドライン

 野生鳥獣の専門家や環境省長野自然環境事務所、関係自治体などで構成する中部山岳国立公園野生鳥獣対策検討会が2日、松本市内で開かれた。席上、北アルプス一帯でのニホンジカの侵入状況について検討した結果、信州大農学部の泉山茂之教授や岐阜大応用生物科学部の鈴木政嗣教授ら野生鳥獣の専門家は「今がデッドライン」と指摘。亜高山帯での効率的な捕獲手法の検討を開始するとともに、試行的な捕獲を実施していくことを決めた。

 検討会での報告によると、公園の周縁部にあたる北アルプス山麓では、ニホンジカの生息範囲が拡大。26年度中に寄せられた北アルプス一帯での目撃情報は30件に達し、そのうちの22件は公園内での目撃だった。また、亜高山帯以上での目撃は17件あり、最も標高が高い目撃場所は岩小屋沢岳付近の標高約2600メートル付近。自動撮影カメラの映像でも侵入が確認され、ニホンジカが公園内に定着し始めている状況が明らかになった。

 昨年秋に同事務所が行った高山植物の重要群落に対するモニタリング調査では、植生への被害は確認されなかった。しかし、泉山教授は「限られた時期の調査で被害がないからといってニホンジカがいないわけでない。昨年までとはかなり状況が違っており、すでに成獣の定着が始まっている」と指摘。鈴木教授も「試行的に(公園内の)捕獲を考えないと手遅れになる。1年先延ばしにするのは相当、リスクが大きい」と警鐘を鳴らした。

 ◆手法の検討を

 25年3月に策定した同公園のニホンジカ対策方針では、リスク管理を侵入状況や植生への影響などにより4段階に分類。評価レベルごとに対策をメニュー化して定めている。これまでは目撃頻度が少なかったことから、山麓部での捕獲を行うレベル1の評価だったが、現在の公園内の状況について、検討会では「すでにレベル2の段階になっている」との認識で一致。対策内容を亜高山帯や侵入経路で捕獲するレベル2に引き上げることを決めた。

 ただ、公園内の亜高山帯は地形が急峻で岩が堆積するガレ場が多いなど捕獲にあたっての制約が多く、捕獲手法などの検討が必要。このため、鈴木教授は「捕獲場所を決めて行う待ち伏せ型の銃による捕獲が有効。(シカが好む餌を仕掛ける)誘因型のわなによる捕獲も検討すべきだ」としたほか、泉山教授も「移動経路を特定してシカを誘導して捕獲する方が効率がいい」などの見解を示している。

 ◆取り組み期待

 また、亜高山帯ではこれらの制約の中での捕獲となるため、銃の高い技能を持つ捕獲従事者を配置することが求められる。県は鳥獣保護法の改正に伴って創設される「指定管理鳥獣捕獲等事業」や「認定鳥獣捕獲等事業者制度」を積極的に導入。27年度は高度な捕獲技術を持つ企業やNPO法人などを認定し、北アルプス山麓地域で事業を委託実施するが、環境省松本自然環境事務所の西尾治首席自然保護官は「こうした手法は亜高山帯での捕獲に有効であり、公園内でも長野県での取り組みに期待したい」と話している。

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