北海道でトドの漁業被害が深刻に 保護策で頭数増加 [北海道]
北海道の日本海側を中心にトドによる漁業被害が深刻化している。追い払いや強化漁網の導入といった対策も奏功せず、2012年度の被害額は過去最高の約16億1200万円に。絶滅への懸念から保護策をとってきた国が、一転して駆除枠を約2倍に拡大する事態となったが、被害を抑えられるかは不透明だ。
北海道付近には毎年秋から春にロシアの繁殖地からトドが南下。刺し網にかかったカレイやホッケなどの魚を食べたり、網を食いちぎったりする。道によると、12年度の被害額は02年度比で約4割増えた。
石狩湾漁協の和田郁夫専務理事は「被害を避けるために網を早く上げるので操業は非効率になる。被害が大きければ漁を休むこともあり、経営は厳しい」と嘆く。
水産庁職員は「被害拡大の最大の原因は北海道近海に来るトドの増加だ」と説明する。環境省はトドを絶滅危惧種に分類していたが、日本やロシアの保護政策や海洋環境の変化により個体数は増加。09年度の来遊頭数は推計約5800頭となり、12年には準絶滅危惧種にランクが格下げされた。
被害の深刻化や個体数の増加を受け、水産庁は7月、トドを増やす政策から絶滅の恐れがない範囲内で減らす方向に方針転換を表明。10年後には日本海への来遊頭数を10年比で6割まで減らす目標で、今秋から年間の駆除数を従来の約2倍の501頭に引き上げる。
だが、北海道漁業協同組合連合会の担当者は「駆除枠を拡大しても、実際に駆除できるかは分からない」と指摘する。駆除は漁の合間に操業を停止して船を出し、猟銃免許を持つ漁業者やハンター計約150人が洋上で行っているが、足場の悪い船上で従来の2倍の頭数を撃てるかどうかは未知数という。
出猟回数の増加も想定されるが、この担当者は「トドの来遊時期は漁の最盛期と重なり漁業者への負担が大きい」と不安をあらわにする。
道は7月、出猟やハンター増員への補助を視野に国に被害防止対策の予算拡充を求めた。
日本海側の漁協でつくる北海道日本海沿岸漁業振興会議の今隆運営委員長は「漁師は刺し網漁では食べていけない状況だ。トドを保護してきた国には支援をお願いしたい」と訴えている。〔共同〕