外周450メートル巨大「囲いわな」でシカ捕獲[群馬県]
生息数が急増しているシカを捕獲するため、県は9月から前橋市と協力し、外周約450メートルの巨大な「囲いわな」を赤城山周辺に設置するなど、本格的な取り組みを始めた。現在は手動で入り口を開閉しているが、4日からはシカがわなに一定数入った段階で扉が自動的に閉まる「AI(人工知能)ゲート」の運用も始める。これほど大きな囲いわなは県内では初めての設置といい、駆除の切り札になればと期待されている。(浜田慎太郎)
県鳥獣被害対策支援センターによると、県内には平成24年度時点でシカ約1万7千頭が生息しているという。7~9年度の調査では約7600頭だったため、ここ15年で9千頭程度増えた計算だ。同センターは「狩猟者数の減少や温暖化による生息地域の拡大が影響しているかもしれない」と指摘する。
県北部の尾瀬でも、シカによるミズバショウなどの食害が深刻化している。県は昨年から、尾瀬国立公園や周辺にわなを仕掛けるなどして、越冬のために移動するシカの捕獲を始めている。
今回、大型囲いわなを設置したのは、農業や林業被害が出ている赤城山周辺の赤芝牧場(前橋市柏倉町)。以前から周辺にカメラを取り付けてシカの動向を探っており、移動が頻繁な地点に設置した。
高さ約2・5メートルのわなに取り付ける「AIゲート」は、捕獲したことを管理者にメールで自動連絡するシステムも備わっており、同センターは「巡視などの労力負担にもつながる」と期待する。
県は今月末までに、沼田市利根町穴原の旧ミリオン牧場にも大型囲いわな(周囲約420メートル)を設置する予定。前橋、沼田の両市のわな設置期間は5年を考えている。
センターは「今回の設置で得られた情報を基に、わなの運用や安全で効率的な捕獲方法を検討し、地域への普及を図っていきたい」としている。