御在所岳のシカ食害深刻 保護地区で銃、ワナ使えず [三重県]
菰野町の御在所岳(一、二一二メートル)で、ニホンジカによる食害が深刻だ。春の観光資源のツツジの皮が食べられ、枯れてしまう被害が後を絶たない。登山者が多く、国の天然記念物であるニホンカモシカも生息しているため、猟銃を使った捕獲は難しい。防除ネットを巻いたり、植樹したりしているが、根本的な打開策は見いだせていない。
御在所岳山上公園に多く生育するツツジ。根元から高さ七十~八十センチほどまで、皮がはがれた木があちこちで見られる。幹を揺らすと弱々しくしなる。「もうしばらくすると、倒れてしまう」と、公園を管理する「御在所ロープウエイ」常務の森豊さん(55)。木が減ると土が流れ出し、災害が起きる危険性もある。
森さんによると、繁殖力の強いシカは食べる量も多く、届く範囲の樹皮や草花を手当たり次第、食べてしまう。シカが苦手な雪が山上で減っていることもあり、頭数は増えており、公園内で一度に十数頭が目撃されることもあるという。
県獣害対策課によると、御在所岳一帯は鳥獣保護地区になっており、県の許可がないと猟銃やワナを使った捕獲はできない。許可が下りたとしても、登山者に周知徹底し、通行止めにするなど事故防止策が必要という。
シカに樹皮を食べられたツツジの木=菰野町の御在所岳山上公園で
捕獲以外の対策として六年ほど前から、四日市市の認定NPO法人「森林(もり)の風」と協力し、幹にネットを巻く活動をしてきた。四年前からは中部電力や三重銀行の寄付を受け、千二百本ほどの植樹もしてきた。費用は一本当たり三千円で、社員が一緒に作業もする。今月十七日には新たに三重交通グループも参加する。
森林の風の滝口邦夫会長(65)は「山を楽しむ人は増えたが、守る活動はまだ少ない。もっと協力者が増えてほしい」と話している。
(田辺利奈)