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狩りガール、密かにブーム?ジビエブームと密接に関係?狩猟技術継承の切り札として期待[東京都]

森ガールに山ガール。「○○ガール」という言葉が世間に浸透してから久しいが、最近「狩りガール」という言葉が誕生したという。「狩りガール」とは、その名の通り狩猟をする女性のこと。会社に勤めながら、休日には山に入って鹿や猪などの鳥獣をハンティングする若い女性が増えつつあるというのだ。

 昨年には国内のハンターの共済事業を行っている大日本猟友会が、「目指せ! 狩りガール」なるウェブサイトを開設。「自然好きとジビエ料理をきっかけに“狩猟肉”に興味を持った」という一人の女性がハンターになるまでの体験記を綴っている。ハンターというと男性が多いイメージだが、実際に女性のハンターは増えているのだろうか?

 大日本猟友会の広報担当者は次のように語る。

「ハンター数などの統計は環境省が発表していますが、その年の統計が発表されるまで2年かかるので、『最近、狩猟をする女性が増えている』と、現時点で断言することはできません。ただし、東京都の発表では、去年の狩猟免許の受験者数が前年の2倍ほどで、女性の受験者は4倍ほどに増えたそうです。『目指せ! 狩りガール』の開設や作者の狩猟体験に基づいた漫画『山賊ダイアリー』(岡本健太郎/講談社)のヒットもあり、またニュースなどでハンターが減少していると報道されたことで、狩猟に興味を持った人が増えたのではないかと考えています」

 まだ女性のハンターが増えているとは断言できないようだが、狩猟に興味を持つ女性は確実に増えているようだ。

●男性よりも女性のほうが狩猟に興味を持つ理由

 狩猟免許の女性受験者数が増えているとはいえ、18万6000人(2009年度)いるハンターのうち、女性のハンターは1539人。約5年前のデータなので現在はもう少し増えているかもしれないが、それでも決して多いとはいえない。

 では、なぜ大日本猟友会は女性にアプローチしたのだろうか?

「狩猟を体験するイベントをいくつか開催しているのですが、男性は『気持ち悪い』と言って、若干引いてしまう人が多い中、女性は食いつきが良いのです。おそらく、女性は料理好きの人が多く、ブロック肉や魚をさばくという行為に慣れているので、肉を処理するプロセスに対して抵抗感が少ないのではないでしょうか。『食べ物が生産されるところを見てみたい』という女性は増えており、そのような食材に対する好奇心のある人が狩猟に興味を持つのだと思います」(同)

 つまり、食材に対して興味を抱いている女性をターゲットに「目指せ! 狩りガール」を開設したというわけだ。

●「狩りガール」が鳥獣被害を減らす?

 では、女性のハンターが増えることで、いったいどのような効果が期待できるのだろうか?

「年々、ハンターの高齢化が進み、ハンターの数も減少傾向にあります。ハンターになるだけなら運転免許を取得するのと同レベルの試験で終わるのですが、狩猟の技術は一朝一夕では身につきません。狩猟の師匠について山に入り、獲物の見分け方を教えてもらったり、安全な狩猟の手法を手とり足とり教えてもらわなければならないのです。その師匠となるハンターが高齢化によって減ってきている上に、技術を受け継ぐ人も少なくなっているのです。若い世代に技術を受け継いでいただきたいと考えておりまして、まずはキッカケとして女性にアプローチしているのです」(同)

 近年、鹿や猪などの野生鳥獣による農林水産被害が深刻化しており、農林水産省の発表によると、全国の野生鳥獣による農作物被害額は年間229億円にも上る。ただハンターが増えれば鳥獣被害が減るという単純な話でもない。実際に狩猟免許を取得しても、10年近く獲物を仕留められないハンターもいるという。将来的なことを考えても、少しでも早く若手に狩猟への興味を持ってもらい、獲物を仕留める技術をベテランハンターから受け継いでいくことが重要なのだ。

 また、ここ数年でジビエ(獣肉)料理を提供する飲食店が増えており、都内でも気軽にジビエを味わうことができるようになったのも狩猟に興味を持つ女性が増えた一つの要因かもしれない。実際に「目指せ! 狩りガール」の主人公の女性は、都内にあるエゾシカ料理の専門店に通っているうちに、「このお肉がどうやって来たのか? 獲るところを見てみたい」と感じたことから、ハンターへの道を歩み始めた。「ジビエブーム」と「狩りガール」には密接な関係があるのではないだろうか。

 狩猟は命に向き合う神聖な行為であるとして、安易にブームとしたり「狩りガール」をもてはやすことに反対する意見もあるようだが、狩猟に興味を持つ女性が農作物の鳥獣被害を抑制する一翼を担う存在となる可能性もありそうだ。この「狩りガール」が一過性のブームで終わらないことを願うばかりである。

 
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