top of page

害獣シカ 広がる食材活用[山梨県]

 農作物を食べ荒らし、深刻な被害を与えているシカを食材として活用する取り組みが、県内でも広がりを見せている。富士河口湖町、丹波山村に続き、今年8月には早川町に食肉加工処理施設が完成し、都内のレストランに食肉を卸している。富士河口湖町では10月、飲食店主や宿泊業者らを集めたシカ肉料理の試食会が開かれ、地域の特産作りも始まっている。

 シカ肉活用の広がりの背景には、頭数の増加がある。県によると、県内に生息しているシカは2013年現在、推計で3万4230頭に上る。これは、環境省が生物多様性保全や農業被害防止などの観点から示した山梨県での適正数(4700頭)の7倍以上になる。また、シカが農作物を食い荒らす農業被害も年々増しており、08年度に2800万円だった被害額は、12年度には4000万円と5年間で1・4倍に増えた。県みどり自然課の担当者は「これまでは駆除したシカは捨ててしまうか、猟師が自分で消費するだけだった。処理施設の整備で食肉としての有効活用が期待できる」と話す。

 こうした中、富士河口湖町精進にある「富士河口湖町ジビエ食肉加工施設管理組合」は08年から、シカ肉の処理・販売を開始。猟師が持ち込むシカを1キロ当たり400円で買い取り、内ロースやモモなど部位ごとに分けて冷凍して1キロ500~4000円で販売している。現在は年間約2トンを処理するまで増え、売り上げも順調に伸びている。加工処理所の滝口雅博所長(61)は「河口湖産はおいしいとプロの料理人から好評をいただいている」と胸を張る。

 09年には丹波山村直営の「丹波山村シカ肉処理加工施設」がシカ肉の販売を始め、年間500~800キロを処理。村営の道の駅でソーセージを販売したり、村営温泉でシカ肉料理を提供したりしている。早川町では町が施設を建設し、現在、町内の民間業者が食肉加工・販売を行っている。

 「柔らかい」「おいしい」――。10月16日、富士河口湖町勝山の勝山ふれあいセンターで行われた試食会では、シカ肉を使ったカレーや竜田揚げなど7種類の料理を食べた参加者から、こんな感想が聞かれた。中でも柔らかいシカのロース肉とトリュフを使った「ロッシーニ風」は、牛肉と変わらないような肉の食感とトリュフの香りが合い、参加者の人気を集めていた。

 試食会を主催したのは、町内の食材を使った料理で地域おこしに取り組んでいる市民団体「富士山麓んめぇ~もん倶楽部」。梶原正信会長(62)は「シカ肉が和洋色々な料理に使えて、おいしいということを知ってもらたい」と話し、今後も試食会を企画するつもりという。

 岡山県ではシカを含めたジビエ(野生鳥獣の肉)の活用を進めようと、11年度から県が飲食店主らを集めた研修会を開催。ジビエ料理などを扱う店は同年度の3店舗から、今年1月時点では22店舗に増えたという。

 富士河口湖町ジビエ食肉加工施設管理組合によると、シカは細菌の繁殖を防ぐため、撃ってから2時間以内に処理する必要があるため、供給が安定していないのが課題だという。それでも、滝口所長は「牛肉と変わらないくらい品質がいいという自信がある。一度食べていただければ、良さが分かるはず」とPRしている。

Featured Posts
最新記事
すべての記事
タグから検索
まだタグはありません。
Follow Us
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page