釧路町~標津町80キロ シカ行ったり来たり 同じ行程 環境省、GPSで初確認[北海道]
【釧路町】環境省が今年初めて釧路湿原で行っているエゾシカの行動調査で、1頭の雌が2月から11月にかけて釧路町達古武―標津町間の約80キロをほぼ同じ行程で往復していたことが分かった。冬の釧路湿原での植生被害と、夏の標津町での農業被害をもたらしているのは同一のシカだった。シカが季節で長距離移動するのは知られていたが、同じ行程で移動するのが明らかになったのは初めて。
調査は2月中旬、釧路湿原の達古武沼周辺に設置した囲いわなで捕獲した雌2頭にイリジウム型衛星利用測位システム(GPS)首輪を装着。3時間に1回の間隔で居場所を調査している。
冬季は2頭とも達古武沼北岸の3~4キロの範囲で生息していた。このうち1頭は4月中旬から河畔林や牧草地、防風林に沿って移動し、5月中旬に標津町に到着。周辺にいた後、8月下旬に来た道を戻り、9月上旬に釧路町達古武に帰った。
もう1頭は釧路町達古武沼周辺から動かず、10月に狩猟で捕獲された。
同省釧路自然環境事務所の寺内聡・専門官は「主に雌が季節で長距離移動をし、2地点を往復していることは予想していたが、これほど同じ行程をなぞるように移動しているとは思っていなかった」と語る。
別の調査では、囲いわなで捕まったシカがその後もわな周辺に来ていることも分かっている。このため同省は知床で行っているシカをおとりに使う手法の導入や、3キロ範囲での集中的な餌付けによる捕獲を検討する。
同省は今冬も達古武沼周辺で囲いわななどによる試験捕獲を続ける方針。寺内専門官は「関係市町村へのデータ提供を積極的に行うなどしながら連携を進めたい」と話している。(大沢祥子)