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エゾシカ肉消費増加 野生動物、供給不安定 高まる需要に追いつかず  [北海道]

農林業に大きな被害を与えているエゾシカ対策として、道内で力が入れられている肉の利用が伸びている。食肉としての処理量は10年間で約3倍に増加。道内でエゾシカ料理を出す飲食店も4年間で10倍に増えた。一方で、野生動物が相手のため供給が安定せず、高まる需要に追いついていないなどの課題もある。【小川祐希】

 ■被害60億円

 札幌の観光名所、時計台そばのビル地下1階にあるイタリア料理店「イルピーノ」。5年ほど前から、エゾシカ肉を使ったミートソースのパスタやカツレツ、ステーキを提供している。パスタを注文した札幌市北区の会社員、関口美穂さん(27)は「初めて食べたけど、臭みがなくておいしい」。一緒に来店した江別市の会社員、雄谷(おおや)友香さん(28)も「くどくなくて、どんどん食べられる」と好評だった。オーナーシェフの川端美枝さん(47)は「道外から食べに来る観光客も少なくない」と話す。

 エゾシカは本州のシカよりも体が約2倍大きく、あらゆる植物を食べるのが特徴で、北海道のみに生息する。繁殖力が強く、2000年度の32万頭から、10年度には65万頭に倍増。それに伴い農林業の被害額も、00年に36億円だったのが10年には59億円に増えた。

 道は10年度から5年間を「緊急対策期間」として、狩猟期間を2カ月延長。捕獲頭数は年間約4万頭増えて14万頭前後になり、生息数は13年度には56万頭に減った。

 ■栄養豊富で人気

 捕獲頭数の増加に合わせ、食肉としての処理量も右肩上がりとなっている。10年度の30万キロから12年度には48万キロに増加。エゾシカ肉料理を提供する飲食店の数も、10年の20軒が昨年には10倍の200軒になった。

 エゾシカ肉は牛肉や豚肉に比べ栄養価が高く、特に鉄分は赤身肉でも牛のレバーより多く含んでいる。処理技術の向上で以前のような臭みがなくなり、人気が高まっている。

 道はエゾシカ肉を貴重な天然資源として、消費拡大を目指す。昨年11月にはAIRDO(エア・ドゥ)でエゾシカ肉を使った機内食を提供したほか、東京で試食会を開き、今月には札幌市でエゾシカ肉料理のコンクールを開いた。さっぽろ雪まつり期間中の2月5〜11日にはコンクールに参加した▽札幌グランドホテル▽札幌パークホテル▽札幌エクセルホテル東急▽夕張鹿鳴館▽ロワジールホテル旭川−−でエゾシカ料理を楽しめるという。

ただ、野生動物を捕獲するため、供給が安定しないといった課題もある。昨年度は狩猟期の冬に雪が少なくエゾシカが餌を見つけやすかったため、餌を求めて越冬地に集まるエゾシカが減少。近年、捕獲を強化してきたことで人への警戒心も高まっており、食肉処理量は12年度より6万キロ減った。道エゾシカ対策課は「需要が高まるクリスマス前後は供給が追いついていなかった」と話す。

 ■「有効活用を」

 また、捕獲されたエゾシカの半数は、有害鳥獣として自治体の依頼を受けて駆除されたもので、食肉処理場にはほとんど持ち込まれず、焼却や埋め立てなどで処分され活用されていないのが現状だ。同課は「駆除されたエゾシカも食肉として有効活用するよう、セミナーなどを通じてハンターに定着させたい」と意欲を見せる。

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