質問なるほドリ:シカとイノシシ、なぜ積極的に捕獲?=回答・渡辺諒
◇畑を荒らし、希少植物にも被害
なるほドリ 最近、シカやイノシシに畑が荒らされる被害が多いと聞いたよ。国が本格的な対策を始めるんだって?
記者 5月末に施行される改正鳥獣保護法(かいせいちょうじゅうほごほう)のことですね。現行法は、戦前や戦中の乱獲(らんかく)で多くの動物が減ってしまった反省を生かした内容です。このため、基本的には捕りすぎを規制しています。ところが、近年、シカなどが全国的に急増し、農林業や希少(きしょう)な野生植物に大きな被害が出ています。改正法は、積極的な捕獲方針を強く打ちだしました。
Q トリも捕獲されるの?
A 心配しないで。大きな被害をもたらす動物を選び、今回シカとイノシシが指定されました。環境省の推計によると、北海道を除く全国のシカ生息数は261万頭(2011年度)ですが、このままでは25年度に500万頭に増えます。イノシシも11年度に88万頭で1989年度の3.5倍です。
Q 具体的な被害は?
A 農家が大切に育てた農作物や若木を食い荒らし、農作物被害は全国で229億円(12年度)に上ります。また、高山帯へも進出し、希少な高山植物を食べていて、絶滅(ぜつめつ)させる恐れもあります。
Q どんな対策をとってきたの?
A 増えすぎたシカなどの捕獲は、趣味のハンターらが所属する猟友会(りょうゆうかい)に主に頼っています。多くの都道府県や市町村は、ハンターが捕獲した頭数に応じた捕獲報奨金(ほうしょうきん)を出しています。ところが、ハンターはこの40年間に6割以上減り約20万人(11年度)となり、うち60歳以上が3分の2を占め、高齢化が進んでいます。
Q それは大変だね。
A 改正法で国は、計画を立ててシカとイノシシの捕獲事業を行う自治体に、プロのハンターを雇えるように人件費などを補助し、被害が拡大している最前線や、頭数を減らす効果が高い場所での捕獲を充実させます。また、民間企業などを認定し、捕獲から食肉の加工・販売を扱うビジネスへの参入を目指します。採算がとれるかどうかが課題です。これらの対策によって国は、23年までにシカとイノシシの頭数をそれぞれ半減させる目標を立てています。(科学環境部)
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