北ア亜高山帯でもニホンジカ捕獲へ リスク評価レベル1から2に[長野県]
北アルプスのニホンジカ対策を協議する中部山岳国立公園野生鳥獣対策検討会(事務局・環境省松本自然環境事務所)は2日の会合で、シカの生息範囲が広がっているとし、植生への影響などを表すリスク評価を従来のレベル1から2に引き上げることを決めた。2014年に実施した調査や捕獲で生息範囲の拡大を確認したためで、捕獲を亜高山帯でも行うことを決めた。
長野県松本市で2日開いた会合には国や県、市村などから約30人が出席。各機関が昨年の北ア一帯でのシカの目撃や捕獲情報を報告した。自動撮影カメラによる撮影では、中信森林管理署(松本市)が北ア南部の西穂山荘周辺(標高約2200メートル)で2回、県環境保全研究所(長野市)が北ア北部の岩小屋沢岳付近(同約2600メートル)で5回撮影した。山麓地域でも環境省などが多数撮影した。
国立公園内でコマクサなどの「重要群落」への被害は確認されなかったが、専門家は「調査位置や期間が限定的である以上、被害がないとは言えない」と指摘した。
リスク評価は全4段階で、レベル1は山麓地での捕獲を対策とし、同2は亜高山帯(同約1500メートル~2500メートル)での捕獲を対策に挙げている。
会議後、検討委員で信州大山岳科学研究所の泉山茂之教授(動物生態学)は「南アルプスのように高山帯の植生被害対策が手遅れにならないよう北アで対策を強化する必要がある」とした。環境省松本自然環境事務所の西尾治・首席自然保護官は「捕獲場所の選定や捕獲の実施主体を検討していきたい」と話した。