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ジビエは正しい調理で 生食は感染のリスクも [愛知県]


野生のシカやイノシシの肉(ジビエ)を提供する料理店が増えている。田畑を荒らす厄介者を駆除した後に、肉を食材として活用するのが目的だが、野生の動物にはウイルスや寄生虫がいるのは十分に知られていない。適切な加熱処理で感染の危険性はなくなるので、もらった肉を家で調理する場合は注意が必要。料理店では、適切な処理がなされているか確認した方が良さそうだ。 (諏訪慧)

 「ジビエは高タンパクで低脂肪。適切に血抜きされていればおいしい。しかし、(感染の)リスクがあるのも確かなので、しっかり火を通しています」

 愛知県北東部の山間地で、三月に開業した道の駅「もっくる新城」(新城市)。駅長の田原直(すなお)さん(45)は強調する。

 看板メニューは、イノシシの骨でだしを取ったラーメン。チャーシューは、イノシシ肉から作った。濃厚な味が人気で、一日当たり限定約六十杯は、連日売り切れ。同県豊橋市から訪れた会社員男性(32)は「臭みがなく、おいしい。五段階評価で四・五です」と笑みを浮かべた。

 田原さんによると、道の駅で野生動物の肉を食材として出すようにしたのは、食害と有害鳥獣駆除頭数の増加で、「野生動物の肉を資源として活用したい」と、住民や田原さんの意見が合致した。これまで、駆除された動物はほぼ全頭が山に埋められていたという。肉質や衛生状態は解体処理に左右されるため、専用施設で処理している。

 野生動物の肉を、新しい食材として売り物にする料理店が全国的に増えている。しかし、寄生虫感染のリスクを知らない料理店もある。

 一昨年、店の特色づくりにと、シカ肉の刺し身などをメニューに加えた愛知県内の居酒屋。県外からも、刺し身を食べに来る客がある。人気が出たことに喜んでいた男性店主(39)は今年、感染リスクを知って驚いた。

 シカ肉は静岡県の猟師から真空パックされた冷凍を購入。「解体してすぐ冷凍しており、生で食べても大丈夫」と聞いていたという。店主は「何かあれば店の責任。提供をやめるしかないかも」と、複雑な表情を浮かべた。

 厚生労働省によると、野生のシカとイノシシは、家畜の牛や豚、鶏よりE型肝炎ウイルス(HEV)や寄生虫による感染の恐れが高いほか、腸管出血性大腸菌を保有している恐れもある。過去二十年間で二十六人が感染し、一人が死亡した。

 正しい調理手順を広めて安全性を高めようと、同省は昨年、衛生管理に関する指針を作り、解体や血抜きの手順などを定めた。しかし、指針に沿った処理方法でなくても罰則規定はなく、牛や豚などに義務付けられている食肉処理時の検査を行うかどうかも業者に委ねられている。

 シカとイノシシの駆除頭数は、二〇一二年度に九十万頭近くに上り、十年前の約二・五倍。今後も捕獲頭数の増加傾向が続くとみられる。

◆店も消費者も注意を

 岩手大の品川邦汎(くにひろ)名誉教授(食品衛生学)の話 牛や豚など飼料から管理して生産している家畜と、何を食べているか分からない野生動物では、リスクがまったく違う。飲食店は安易に刺し身を提供してはいけないし、消費者もメニューに載っている料理は安全だと思い込まず、正しい知識を身に付けてほしい。

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