県、シカ捕獲対策を強化 免許取得支援や講習会[福井県]

県内でニホンジカの生息頭数が増えて生息域が拡大しているのを受け、県が捕獲体制の強化に乗り出した。講習会を開くなどして山林の状況に詳しい森林組合の職員がわな猟免許を取得することを支援。十月までに、わな猟の有資格者らを対象に実践的な研修を五市町で開き、わな猟による捕獲体制を整える。
県によると、シカの推定生息数は嶺南が二万二千頭、嶺北が一万頭。生息域は県内全域に拡大しつつあるとみられ、県猟友会も「対策を急がなければ、取り返しがつかないことになる」と危機感を募らせる。一方、市町の有害捕獲隊員の不足や猟師の高齢化もあり、県特定鳥獣保護管理計画に盛った捕獲目標「年間九千六百頭」の達成は難しいようだ。
そこで、県が着目したのが法的規制が銃より少なく、ほぼ年間を通じて取り組める「わな猟」だ。二〇一四年度から森林組合職員を対象に講習会を実施。県内十一組合のうち、福井市や九頭竜(大野市)、南越(越前市)、れいなん(小浜市)など七組合が協力し、計二十八人が七月二十一日と八月三日のわな猟免許の試験に挑戦。今月下旬の合格発表を待つ。資格取得後にはわな購入や捕殺処分の費用などの活動費を助成する。
経験の浅い「ペーパー資格者」を対象に福井、大野、小浜、南越前、美浜の五市町で県猟友会の研修も始まる。少人数制で山に足を運んでわなの仕掛け場所の選び方などを学ぶ演習的な内容とし、即戦力の育成を目指す。
一二年の有害鳥獣による県内の農作物被害は九千五百二十三万円。うちシカによる被害は六百八十一万七千円と少ないが、樹皮をかじってスギが枯死するなど林業被害は深刻だ。下草が食べ尽くされ、山肌が露出して土砂が流出したり、生態系が激変したりと、環境にとっても「天敵」といえる。
(北原愛)